標準治療の無効や副作用が強く継続できない、または複数の転移があるなどのがん患者には治療法がないとされている。それら進行がんに遺伝子検査をして、個別に薬剤を作る血管内治療が実施されている。少量の薬剤をがん周囲の血管にカテーテルで直接投与するため、副作用が少なく、しかも遺伝子変異に応じて薬剤を変えるので再燃を減らすこともでき、良好な状態の維持が可能だ。
がんの遺伝子検査とは、切り取った組織や血液から取り出したDNAで特徴的な遺伝子変異を見つける検査だ。抗がん剤が効くかどうかを検討するコンパニオン検査と、標準治療がない患者を対象に別の薬物療法を探るがん遺伝子プロファイリング検査がある。
対象となる遺伝子のセットはパネルと呼ばれ、がん遺伝子パネル検査の一部が保険承認されている。この検査を行なうことで、効果の高い薬剤を選択できるようになった。
クリニカE.T.EAST(東京都中央区)の奥野哲治院長に話を聞く。
「個別に、より細かく遺伝子検査をするため、サンフランシスコの検査ラボに血液を送っています。結果、転移のある84%のがん患者に遺伝子変異が見つかります。中には156もの遺伝子変異がある患者もいました。そうした遺伝子変異に有効な薬剤を探し、組み合わせて個別の治療計画を立てるオーダーメイド治療を実施しています」
治療にあたり、まずは全身拡散強調MR画像(DWIBS)と、脳MRを組み合わせた画像検査を行ない、病変の広がりや進行度合いを把握し、これに遺伝子検査の解析結果を合わせて使用薬剤を選択、カテーテルによる血管内治療を開始する。
がん組織では不規則な血管分枝が増え、血管の密度が高まる。血管密度が高いがん組織は血流が停滞して中心部が低酸素状態になり、がんの増殖スピードが上がる。さらに周囲のリンパ節も同様に血管が過密となり、淀む血液中のリンパ球の表面に免疫チェックポイント蛋白が現われ、がん細胞と結合する。