これにより、がん細胞はNK細胞など免疫細胞の攻撃を避けられ、抗がん剤や放射線治療の効果を示さなくなる。そこで、この異常に増えた血管に直接薬物を投与する血管内治療を行なうことで、増殖中の血管を消滅させるのだ。
例えば、変異遺伝子が6個以上、あるいは病的意義の不明な変異(VUS)が4個以上の場合、少量の免疫チェックポイント阻害剤と、抗炎症剤による局所腫瘍血管低減治療と、内服による血管新生阻害治療を行なう。免疫チェックポイント阻害剤と、抗炎症剤を用いた血管内治療94例では治療後1か月で23%、4か月後には37%に有意な腫瘍の縮小結果が得られた。
「がんの遺伝子変異は2、3か月で変化します。それまでなかった変異が出てくることも多く、定期的な遺伝子検査は欠かせません。変異に応じた治療薬の組み合わせが良好な状態を保ちます」(奥野院長)
この治療は自由診療となる。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年3月3日号