担任は「100人に1人の倍率だよ」
試験には、高校時代の内申書が必要とあった。母校の平沼高校を訪ねると、前年まで敬子の担任を請け負った教師はこう言った。
「君は大学に行くんじゃなかったのか」
「いえ、試験度胸を付けるために受けるんですよ」
すると教師は苦笑交じりにこう言った。
「君ねぇ、スチュワーデスの倍率がどれだけか知ってるの?」
「さあ」
「100人に1人の倍率だよ」
それを聞いて、敬子は改めてその狭き門を知った。ただ、受かるつもりはないのだ。あくまでも、大学受験の予行演習である。
「わかってますよ、それくらい」
敬子がそう言うと、教師は笑いながらこう言った。
「普通にスチュワーデスを目指してる人に悪いだろう。でも、まあいいや、試験度胸を付けてこい」
敬子もそのつもりだった。しかし、この受験が運命を変えることになる。
(文中敬称略。以下次回、毎週金曜日配信予定)