ライフ

川上未映子さん、最新長編を語る「離れた場所から誰かの人生を幸か不幸かジャッジすることはできない」

『黄色い家』

川上未映子さんが著書『黄色い家』について語る

【著者インタビュー】川上未映子さん/『黄色い家』/中央公論新社/2090円

【本の内容】
《このさき、自分がどこで生きることになっても、何歳になっても、どうなっても、彼女のことを忘れることはないだろうと思っていた》。物語はこんな一文で始まる。惣菜店に勤める伊藤花・40歳は、ネットで見た事件記事に載った吉川黄美子の名前に、長く蓋をしていた20年以上前の記憶があふれ出す。それは、他の少女2人とともに、母のもとから逃げるようにして一緒に暮らし始めた疑似家族の日々だった。スナックで必死に働き、諍いはありながらも平穏な生活は続くかと思われたが、ある日、火事で店は休業を余儀なくされて……1990年代を舞台に現代社会を描き出す、一気読み必至の長編小説。

1990年代のカード詐欺といまのオレオレ詐欺の根っこは繋がっている

『黄色い家』は、川上さんが初めて手がけた新聞連載小説だ。

 惣菜店で働く伊藤花は、ネット記事の中に偶然、知人の名前を見つける。20代の女性を監禁したなどとして逮捕された吉川黄美子と花は、20年ほど前、生活をともにしていたことがあった。

 小さな記事をきっかけに、主人公が封印していた過去に引き戻される構成が面白い。

「せっかくの新聞連載なのでニュース記事から始めようと。報道記事って、どうしても事件の概要だけ伝えるじゃないですか。でもその背後には、本1冊2冊書いてもおさまりきらないディテールが、もしかしたらあるかもしれない」

 小説を読み終わった後で黄美子が起こしたとされる事件を読み直すと、川上さんが意図したとおり、驚くほど印象が違ってくる。

「新聞連載小説は初めてでしたけど、特に準備もせず、ある家で4人の女性たちが暮らした時期があり、何かが起きて、そのことを振り返る、というところだけ決めて書き始めました。

 最初に各章の題は決めておいたんです。『金運』とか『一家団欒』とか、お金や家族に関係する言葉をストックしておいた中から選んで、最後は『黄落』と決めて、それに合わせて書いていきました。いままでとは違う書き方でしたね」

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン