旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題以降、過酷な幼少期を送った「宗教2世」たちが被害を訴えているが、彼ら彼女らには心ない言葉が飛ぶことも珍しくない。なぜそれでも発信を続けられるのか。問題の中心に立つ小川さゆりさん(元旧統一教会2世)、夏野ななさん(元エホバの証人3世)に、ジャーナリストの鈴木エイト氏が思いを聞いた。【前後編の前編】
「排斥」というペナルティ
エイト:2月28日、キリスト教系の宗教団体「エホバの証人」の2世信者らを支援する弁護団が記者会見を開きました。直後の国対ヒアリングには夏野さんが顔を出して被害を訴え、話題を集めましたね。
夏野:私は祖父母がエホバの証人に入信し、両親も信者なので生まれながらの宗教3世です。エホバの証人は信者の子どもをムチで打ち、信者の子どもの輸血を拒否することで有名ですが、私も子ども時代に何度もムチで打たれ、学校に行く際は「輸血拒否」のカードを首からぶら下げていました。
私自身は一度も信仰を持ったことがなく、教義も納得がいかず肉体的な虐待もあったので、中学校の時に限界を感じて家出し教団から離れました。
エイト:夏野さんは昨年11月の国対ヒアリングから、顔を出して発信を始めましたね。
夏野:昨年7月の安倍(晋三)元総理暗殺後、エホバの元2世信者の方がテレビで発言したのを見て個人的に感謝を伝えるメッセージを送ったら、「顔を出して発信する人がいないから、なかなかメディアに取り上げられない」と連絡が来て。葛藤はありましたが、だったら自分がやりましょうということになりました。
エイト:一方で小川さんは、統一教会の元2世信者として精力的に発信を続けてきました。昨年10月に涙ながらに解散を訴えた会見は、この問題の潮目を変えるものだったと今でも思います。
小川:私も最初は匿名で顔を出さずに取材を受けていました。テレビの依頼をいただいた時、顔を出すべきかかなり悩みましたが、普通の家庭を持つ人間が被害を受けていたことをリアルに伝えるには、顔を出して伝えることが重要だと考えました。夫が「協力するよ」と言ってくれたことも励みになりました。