漫然と薬を飲み続けることは避けたほうがよい。多くの医師から「飲みたくない」との声が挙がったのが、抗生物質だ。外科医の井上裕章医師(ヴェアリークリニック院長)は、特に「セフカペンは絶対に飲みたくない」と語気を強める。
「風邪で病院を受診すると気軽に処方される薬ですが、結論から言うと効く実感がありません。セフカペンは飲み薬ですが、その成分は消化器からほぼ吸収されないんです。風邪はウイルス性がほとんどなので、そもそも抗生物質は処方する意味がないのですが、薬自体が吸収されないとなると、なおさら意味がありません。
抗生物質は気軽に飲むものではなく、菌の種類や感染部位、薬の投与経路が正しく診断されたうえで処方されるべきものです」(井上医師)
医薬品の安全承認などを手掛けるPMDA(医薬品医療機器総合機構)で審査専門員を務めた経歴を持つ谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎)も、セフカペンには同様の見解を持っているようだ。
「セフカペンなどの第3世代セフェム系抗生物質は、特に日本でよく使われています。敗血症や命に関わる細菌感染など、使うべき時には非常に有効ですが、風邪症状の時に肺炎や扁桃炎の予防目的で処方されることが多く、世界中で問題になっている抗生物質の過剰使用の一例です。
何度も服用することで耐性菌が体内に棲みつき、肺炎などで本当に投薬が必要な時に効かなくなる危険があることから、必要な時以外では私は飲みたくありません」
便秘薬を飲んだら、かえって悪化することも
井上医師は、高齢者の多くが悩む便秘解消のための刺激性下剤センノシドの服用にも否定的だ。
「刺激性下剤は依存性が強く、服用量がどんどん多くなるとの話も聞きます。便が固くなっているのに刺激性下剤を飲むと、腸に穴が開くということも考えられる。かえって悪化してしまうリスクがあるということです。
私が高齢になって便秘薬を飲む時は、まず非刺激性下剤の酸化マグネシウムを服用し、どうしようもないという時だけ、刺激性下剤を飲むようにしたいと考えます」