「リキさん、この人どう思う?」
その後、六大学野球のスターとなった森徹が、早大のチームメイトを引き連れて人形町の日本プロレスの道場に通ったのも、このときの関係性があったからで、公私両面で森家と力道山の関係は続いていた。
その森徹の母の信が「自分の息子の嫁に」と思った日航スチュワーデスの田中敬子を、以前から懇意にしている力道山の嫁にと考え直すのは、ごく自然なことだったのかもしれない。
勢い込んで現れた信は、力道山に敬子の写真を差し出した。
「リキさん、この人どう思う?」
「どうって」
「あんたのお嫁さんにどうってことよ」
このとき初めて、力道山は田中敬子を見たのである。
(文中敬称略。以下次回、毎週金曜日配信予定)