4月23日投開票の衆参5補欠選挙と統一地方選後半戦は衆院解散戦略にも影響を与えるとして自民党が総力戦で挑んでいる。だが、岸田文雄・首相の腹の中はもう決まっているようだ。まるで “騙し討ち”ともいえる「6月解散」に向けて、着々と歩を進めていた。政治ジャーナリスト・藤本順一氏が指摘する。
「秋に増税の議論が始まり、岸田首相は増税に前向きです。だからその前に解散・総選挙を打つつもりでしょう。しかも、総選挙では子育て対策などバラマキを前面に掲げ、増税には一切触れない“増税隠し解散”をやろうとしている」
その「増税隠し解散」を後押ししているのが財務省だという。
消費税の話が出てこない
いま、岸田政権は「増税隠し」のために、あの手この手の誤魔化しに躍起だ。統一地方選投票日の前日(4月8日)、注目される2つの報道があった。
まず、大手新聞各紙が〈少子化対策、財源は社会保険料増が軸〉(読売)〈少子化対策、財源に保険料浮上〉(日経)などと一斉に報じた。
少子化対策の財源をめぐっては、今年初めに甘利明・元自民党税調会長が「消費増税」に言及して批判を浴びた経緯がある。
首相は鳴り物入りで発足させた「こども未来戦略会議」の初会合(4月7日)で財源について、「子ども・子育て政策を大胆に進めるに当たり、世代や立場を超えた国民一人一人の理解と協力を欠くことはできない」と挨拶した。
各紙は首相の発言の意味を、〈政府内では、年金や医療、介護、雇用の各種社会保険料の国民1人当たりの月額保険料を引き上げ、上乗せ分を財源とする案が有力視されている〉(読売)──と解説したのである。
年間8兆円の少子化対策を全額社会保険料で賄うには、保険料が1人平均年10万円上がるという試算もある。それでも“増税ではない”と言い逃れができる。
もう一つは、防衛増税をめぐる報道だ。
〈決算剰余金拡大、増税延期を検討 防衛費増額財源で自民、財務難色〉。共同通信がそんな見出しで、自民党内では防衛財源について、予算の余り(決算剰余金)を活用することで増税を延期する案が検討されていると伝えた。
巨額の少子化対策や防衛費の財源を考えれば、増税の選択肢は誰でも浮かぶ。そこで、社会保険料だの、剰余金だのと国民が増税に目を向けないように誤魔化そうとしているのだ。