さすがに政府の見え見えの増税隠しは財界からも批判が上がった。経済同友会の桜田謙悟・代表幹事は会見(4月4日)で、「保険料、またですか。なぜ消費税の話が出てこないのかが疑問」と指摘した。
消費税の話が出ないのは、政府がわざと隠しているからだ。国民には「増税はしない」と言いながら、官邸は総選挙後の増税実施をにらんで自民党内の反増税派切り捨ての人事まで検討している。
防衛増税に公然と反対した高市経済安保相と、少子化対策の財源について「増税は考えていない」と言明した茂木敏充・自民党幹事長の交代だという。官邸筋の話だ。
「岸田総理は解散総選挙の前に内閣改造・党人事を行ない、総務省文書問題を抱えた高市経済安保相を切ることを検討している。できれば、少子化対策の叩き台づくりなどでこのところ独断専行が目に余る茂木幹事長も交代させたい」
自民党の増税反対派の中心人物である高市氏を交代させたいのは理由がはっきりしているが、茂木氏の発言はいわば政府の“増税隠し”に沿ったものに見える。
だが、岸田首相はそうは受け止めていないようだ。
増税反対の火種を消す
「岸田総理は、次の総裁選への出馬を狙っている茂木さんは、総理が総選挙後の増税を視野に入れていることを承知であえて増税反対を唱え、党内の反増税派に支持を伸ばそうとしているのではないかと警戒している。だから幹事長を交代させ、いまのうちに増税反対の火種を全部消しておきたい」(同前)
相関図は、自民党内の増税をめぐる対立の構図を示したものだ。自民党内では高市氏が火を付けた防衛増税反対運動の後、萩生田光一・政調会長が防衛財源問題の特命委員会を設置し、岸田側近の増税推進派と対立した増税反対派議員を結集したものの、その萩生田氏はいつの間にか「(増税反対か賛成かの)対立ではない」と言いだして首相に擦り寄るなど、反対派の切り崩しが進んでいる。