警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、変化を求められている選挙警備について。
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選挙警備は難しい。再び世間にそう知らしめた事件が4月15日、和歌山市の雑賀崎漁港で起きた。岸田文雄首相の選挙演説会場に、爆発物が投げ込まれたテロ事件だ。木村隆二容疑者(24才)はその場で取り押さえられ逮捕。動機については、黙秘を続けていると報じられ、未だ不明のままである。
演台近くにいた首相の足元に転がったのは、木村容疑者手製と思われる金属製の筒形の爆発物。和歌山県警の警護員が即座に反応。爆発物を蹴り、鞄状の防護板を広げながら首相に身体をぶつけてガードした。鉄パイプ爆弾とみられる筒状の物は2つ見つかっており、そのうちの1つが50秒後に爆発。複数の警護員によって退避した首相にけがはなかった。
首相と聴衆との距離は約5メートル、コーン標識で区切られていただけ。手荷物検査も実施されなかったという。事件発生時の映像を見た警察関係者は、「警備と一括りに考えがちだが、警護と雑踏警備は全く別物」だと話す。警護は人について非常事態の発生を警戒して守ることであり、警備は雑踏での事故の発生を警戒し防止するのが業務である。和歌山県警は現場となった漁港で、過去に要人警護をした実績がないことがわかっており、「この2つの任務分担がしっかりされていなかった可能性が高い」と警察関係者はいう。
特に警察関係者が指摘したのは、現場に多数配置されていた制服警察官らの視線の向きだ。「総理がきて、そっちが気になって見たくなってしまったのだろう」と話す。警視庁の元刑事も、現場の映像を見て同じ点を指摘した。「配置された警察官は通常、対象者である総理に背中を向けて聴衆の方を見なければならないのに、対象者(総理)を見ていた。あれでは不審者や被疑者の発見、確保は難しい。警護警備の基本なのだが、それが守られていなかったようだ」。