健康のためよかれと思っていた食事法が、逆に不健康を招いてしまう事例は少なくないという。例えば「朝の果物は金」といわれるが、摂り方を間違えるとかえって健康を害してしまいかねない。管理栄養士の安中千絵さんが言う。
「ジュースにして搾りかすを捨てると、せっかくの食物繊維がなくなってしまううえ、液体にすることでかさが減ります。ジュースを作るために必要なフルーツの量が増え、それに比例して摂取する糖質量が増える。果物はしっかりと咀嚼して、ある程度満腹感を得ながら食べた方が健康にいいのです」(安中さん)
特に市販の果物や野菜のジュースは、食物繊維やビタミンCなどの栄養素が失われているうえ、味の調整のために砂糖が多く含まれている場合があり、糖質の摂りすぎにつながりやすい。2013年のハーバード公衆衛生大学院の研究者の調査によると、果物を週2回以上食べる人は2型糖尿病のリスクが23%減少したのに対し、市販の果物ジュースを毎日1杯以上飲む人は反対にリスクが21%増加したという。
新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが推奨するのは、果物を皮ごと食べること。
「果物には抗酸化物質が豊富ですが、存在するのは皮とそのごく内側だけです。りんごなどは水でしっかり洗って、皮ごと食べてください」(岡田さん)
みかんに代表される柑橘類は食べるタイミングにルールがある。
「柑橘類の多くは皮にソラレンという光過敏性のある物質を含んでいます。この物質は紫外線に過剰に反応して肌のメラニン細胞を刺激し、シミの原因となるメラニンの分泌量を上げる性質がある。ソラレンの働きは食べてから2時間後に高まり、5~6時間継続することもあるので、朝の摂取には要注意です」(管理栄養士の望月理恵子さん)
澤田肝臓・消化器クリニック院長の澤田幸男さんによれば、食後のデザートに果物を食べるのは「アダムスキー式ではNG」だという。
「私たちの主食となる米や小麦、肉、魚、野菜はスローに属し、フルーツはファストに分類されるため、同時に摂ってはいけない。ベストタイミングは17~18時頃の“遅めのおやつ”です」(澤田さん)
こまめな水分補給は脱水症状を防ぐためにも不可欠。ダイエットのために「1日2リットルの水を飲むといい」ともいわれるが、実際に女性が摂取すべき水分の適量は1日1.5リットル程度だとされている。しかも大量の水を一気に飲むと、「水中毒」になり、ひどい頭痛などの症状を引き起こす危険さえある。
水以外の飲み物についても、岡田さんは間違った常識がはびこっていると指摘する。
「コーヒーは飲みすぎると体に悪影響があるといわれていましたが、最近の研究では大丈夫であることがわかってきました。コーヒーや紅茶も抗酸化物質の多い優良食品です。ただし、砂糖をたくさん入れて飲むと糖質の摂りすぎにつながり、逆効果です」