年に一度の健康診断や、日々の測定で直面する「数値」。なかでも自宅で手軽に測れる「血圧」は、特に健康バロメーターとして気にする人が多い。高血圧は“国民病”として知られる。日本では約2400万人(2014年時点)が降圧剤を処方され、“正常値”に近づけようと日々服薬している。
しかし、歳を重ねるなかでの薬の服用は、リスクにもなり得る。『80歳の壁』の著者で精神科医の和田秀樹氏が言う。
「高齢者の場合、血圧を下げすぎると、脳に十分な酸素が届かない事態が起こり得ます。ひどい時はぼんやりしたり、だるくなったりすることもある。たしかに薬を使えば血圧は下がりますが、下げすぎることで起こる弊害が要注意なのです」
薬に頼らずに血圧の数値を下げたい──そう願う人が「食事制限」やハードな「運動」を始めることがあるが、和田医師はそうした取り組みに対しても注意を促す。
「血圧対策でポピュラーなのは減塩ですが、ナトリウムは生命維持に不可欠な栄養素です。歳とともに腎臓のナトリウムを貯める機能は低下するため、高齢者が減塩を厳格にしすぎると、『低ナトリウム血症』のリスクがある。意識が朦朧としたり痙攣を起こしたりするなど、最悪の場合は死に至る症状なので注意が必要です。また、高齢者が急にハードな運動に取り組むと、身体が酸化したりかえって血圧が上がるリスクもあります」
和田医師は血圧を無理せず下げたいのであれば、「高齢者がやるなら簡単なエクササイズを継続するのがいい」と言う。
大事なのは時間より継続
そうしたなか、いま血圧の数値を改善するエクササイズを提唱して話題なのが『「バナナ腰」を治せば、体の不調が消える!』の著者で整体師のとも先生だ。
「エクササイズによる降圧効果を目指すために重要なのは、『大きな筋肉を動かして血流を良くする』『ふくらはぎを使って下半身のポンプを使う』『しっかり肺と胸を開き深い呼吸をする』『副交感神経を優位にする』ことです」(以下、「 」内のコメントはとも先生)
とも先生が推奨するエクササイズの特徴は、「寝ながらできる」点にある。それを実践し、血圧を50近く下げて断薬につながった人もいたという。
「血圧が180を超えたところで降圧剤の服用を始めた人のケースです。『薬に頼り続ける生活はしたくない』というので服薬と並行してエクササイズを始めてもらったところ、約2か月で血圧平均130をキープできるようになり薬も飲まなくなった。もちろん、この間の減薬や断薬については医師の指示に従ってもらいました」