「30代前半からなので、もう40年以上、便秘に悩んでますよ……」。テリー伊藤氏(73)はそう深い溜息をつく。
「一番嫌なのは、もう便秘にどれだけ振り回されているんだ、っていうことですね。毎日のように市販の便秘薬を飲んで、収録の時間にあわせて調節していますが、うまくいかないと移動中やロケ中にお腹が痛くなったり、出てもコロコロとした硬い便だったり……」
そう語るテリー氏の悩みは切実だ。便秘は女性に多い悩みと思われがちだが、男性も60代から増え始め、75歳以上で男性のほうが多くなる(厚労省「国民生活基礎調査」)。たかが便秘と侮ってはいけない。便秘が認知機能の低下を速める可能性が指摘されているからだ。横浜市立大学大学院の肝胆膵消化器病学教室の中島淳・主任教授が説明する。
「東北大学加齢医学研究所の中瀬泰然准教授らの研究によれば、慢性的な便秘がある人とない人を比較すると、慢性便秘の人のほうが認知機能の低下が2.7倍速いとの結果が出ました。この調査は対象者が少なく、さらなる研究が待たれますが、腸内細菌が集まって形成される『腸内フローラ(腸内細菌叢)』と認知機能には深い関係があるのです」
若い頃に便秘の経験がなかった男性は、年齢を重ねて発症した際に気づかないケースも多いと中島教授は指摘する。そこで重要なのが、排便習慣を記録に残してチェックすることだ。
中島教授が監修を務め、ビオフェルミン製薬が配布する『腸から健康日誌』の1週間分の記入用紙がある。ビオフェルミン製薬学術情報グループの山下明子氏が説明する。
「血圧や血糖値などは記録する習慣がついている方も多いのですが、便の状態には違和感を持っている人が少なくないにもかかわらず、記録する習慣はついていません。こうした冊子を作ることで、便のお悩みを見直すきっかけになれば、と考えて作成しました」