今年もリクルートスーツの学生たちが街を闊歩している。就活生や若手社員にとっては、仕事に関する不安や心配は尽きないかもしれないが、実は中堅・ベテランの社員であっても、いつも仕事の不安を抱えているものだ。むしろ、目の前の不安や心配の理由を、自分なりに“整理”できるかどうかが、仕事上の問題解決のカギになることが多い。
そうした悩みごとを解決するヒントとして、いま話題になっているのが「首尾一貫感覚」という考え方だ。ストレスマネジメント専門家で、企業や官庁でカウンセリングをしている舟木彩乃氏が、実際の相談事例をもとに解説する。
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これまで私は、企業や官庁で多くの方々をカウンセリングして、さまざまなお話をうかがってきました。その中から、一例として30代前半の女性Aさんの悩みと、それに対するアドバイスを紹介します。
◆Aさんの悩み──仕事のことが頭から離れず、心休まるときがありません
「毎日会社で嫌なことばかり起き、仕事が終わったあとも、それが頭から離れません。他の人に相談したところ『気にしすぎだよ』と軽く流されてしまいました。帰宅後も休日も、仕事や職場の不安でいっぱいになることが多く、心が休まるときがありません。これからのことを考えると、暗い気持ちになってしまいます。どうしたら、もう少し安定した心を持てるのでしょうか」
◆Aさんへのアドバイス──「3つの感覚」を使って、悩みごとを整理しよう
嫌な出来事がいつも頭から離れないというAさんは、気持ちが休まらず心身ともに疲弊している状態でした。いわゆる「職業性ストレスモデル」でいうところの「精神面のストレス反応」が出ている状態です。Aさんはなぜこのような状態になってしまったのでしょうか。
一番大きな原因は、Aさんが“今”に集中できておらず、本来の自分を見失っていることです。過去を悔やんだり、良い未来を描けず不安になっていたり、“今”ではなく過去や未来に支配され、人生の時間軸の中で今いかにあるべきかがつかめていない状態です。
こういうときは、自分の置かれている環境を客観的に把握できていないことが多いです。まずは、自分を取り巻く環境について、整理することから始めます。「首尾一貫感覚」をツールにして、環境を整理してみましょう。
首尾一貫感覚は、次のような3つの感覚からなっています。
【1】把握可能感(だいたいわかった)──自分の置かれている状況や今後の展開を把握できると思うこと
【2】処理可能感(なんとかなる)──自分に降りかかるストレスや障害に対処できると思うこと
【3】有意味感(どんなことにも意味がある)──自分の人生や自身に起こることにはすべて意味があると思うこと
カウンセリングでお話を聞いていくと、この3つの感覚のうち、どの感覚が低い状態なのかが見えてくるものです。Aさんの悩みごとを整理し、3つの感覚を意識した質問を投げかけると、次のような回答が得られました。