『成瀬は天下を取りにいく』著者の宮島未奈さんに訊く
【著者インタビュー】宮島未奈さん/『成瀬は天下を取りにいく』/新潮社/1705円
【本の内容】
《「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」/一学期の最終日である七月三十一日、下校中に成瀬がまた変なことを言い出した。いつだって成瀬は変だ》。本作はこんな文章で幕を開ける。西武とは、2020年8月31日に閉店した、滋賀県大津市にあったデパート・西武百貨店大津店のこと。中学2年生の夏休み、幼なじみの成瀬が掲げたスケールの大きな“計画”が動き始める「ありがとう西武大津店」のほか全6編を収録。
連作短編ながらバラバラも、逆に「意外性があって面白い」と
宮島未奈さんのデビュー作『成瀬は天下を取りにいく』が、多くの読者を獲得している。
最初の1編「ありがとう西武大津店」は、新潮社主催の新人賞、R−18文学賞の受賞作である。これまでにも話題作を次々世に送り出しているこの賞で、史上初の三冠を達成したことでも話題だ。
主な登場人物は女子中学生の成瀬あかりと島崎みゆき。2人は幼なじみで、生まれたときから同じマンションで暮らしており、性格は異なるが仲はいい。他人の目をいっさい気にしない成瀬の将来の夢は「二百歳まで生きる」ことで、「凡人」を自認する島崎は、そんな成瀬を見ていることを自分の務めと思っている。
独立した短編として書かれた「ありがとう西武大津店」から続くかたちで5編が書かれ、連作短編として1冊になった。6編を1本の線で順につなぐのではなく、話の幅を思い切り広げて、最後で一気に収束させる構成が新鮮で面白い。
「結構、バラバラだなと自分でも思っていて、逆にそれだから『意外性があって面白い』と言ってもらえているようです。
1話から順番に書いていくのではなく、2話、3話、4話、5話が別々に1話からつながり、最終的に6話に収束します。設計図もつくらず自然とそうなりましたが、書き上げてみると意外にまとまったかなと。連作短編の場合、普通はもっとテーマを絞るのかもしれませんが、そうしなかったことが、意外性や新しさにつながったのかもしれないです」(宮島さん・以下同)