どのようなリスクが上がるのか。長澤さんが解説する。
「低血糖や腎機能障害、高カリウム血症を引き起こす恐れがあることが報告されている。特に高カリウム血症が重症化すると不整脈を起こすことがあるし、腎機能が低下すると透析が必要になることも。高齢者ほど避けるべき組み合わせと言えます」(長澤さん・以下同)
もちろんほとんどの医師や薬剤師は万全の注意を払って処方しているものの、特に複数の病院や科をまたがってかかっている場合、医師や薬剤師にのみ合わせに伴う弊害を見逃されてしまうこともある。
注意すべきは降圧剤同士ののみ合わせだけではない。血圧は年を重ねるごとに上昇していくため、降圧剤をのみながら別の病気を抱えている患者も多い。
「高血圧の人は血糖値も高いケースが多く、インスリンなどの糖尿病治療薬とともに降圧剤が処方されますが、β遮断薬との組み合わせには注意してほしい。
糖尿病患者は薬で血糖値が下がりすぎることがあるため、低血糖の初期症状である眠気や動悸、頻脈が生じた場合はすぐにブドウ糖をのむように医師から指示されています。しかしβ遮断薬は頻脈を抑える作用があるので、低血糖による頻脈がわかりにくい。対処が遅れて、重症低血糖を招くことがあります。
同じく、糖尿病の治療に用いられるSGLT2阻害薬と、ループ利尿薬とののみ合わせにも気をつけるべきです。両者ともに利尿作用があるため、増強されて、低血圧によってめまいやふらつきが引き起こされるリスクがあるのです」
相性が悪い薬は糖尿病治療薬だけではない。血栓の治療に使われる抗凝固薬(ワルファリン)はβ遮断薬と組み合わせると、抗凝固薬の血中濃度が上昇して作用が増強することがある。ARBやACE阻害薬と気分安定薬(リチウム製剤)の併せのみでは、リチウム中毒も報告されている。
サイアザイド系利尿薬と、皮膚炎や肝機能を改善させるグリチルリチン製剤の組み合わせも、低カリウム血症になりやすいので注意が必要だ。谷本さんが言う。
「血液中のカリウム値が少し低下しただけならば、問題ありませんが、重症化すると手足の脱力や痙攣、筋肉の麻痺を起こし、不整脈を起こすこともある。漢方によく含まれる甘草にも同様の成分が含まれています」
漢方薬は「自然由来」とはいえ、れっきとした薬。成分表をしっかり確認したい。
※女性セブン2023年6月1日号