無論、M-1への恩讐もある。囲碁将棋はM-1戦線において、早くから「次に決勝に来るのは囲碁将棋だ」と言われ続けながらも、最後まで決勝の舞台に立つことは叶わなかった。根建は悔しさを露わにした。
「決勝にいってると思われているところもあるんですよ。でも、出てないし、なんのタイトルも獲ってない。漫才やってよかったって、1回くらい思いたいんですよ。優勝したら、めちゃめちゃ思えそうじゃないですか。僕らのようなコンビのために開いてくれた大会だと思っているので」
一方の文田はM-1への未練はほとんど感じさせなかったが、こんな感想をもらした。
「今大会は、2015年のM-1予選で落ちたときのネタもかけたんです。それで決勝に通ったっていうのも、ちょっと皮肉ですよね」
囲碁将棋のスタイルは、簡単な自己紹介をしたら、すぐさまネタに入る。そして、ハイテンポのまま6分間を一気に駆け抜けた。囲碁将棋は「完成」こそが武器だった。文田が言う。
「他の人たちは、割と肩の力を抜いてる感じでしたよね。けど、僕らはそこに乗っからないようにした。そっちのほうが際立つし、自分たちにも合ってる。選考会のとき、今日イチのウケだと思ったんですよ。あんな感覚は久しぶりでしたね。もう、落とせるもんなら落としてみろと思って帰りましたから」
囲碁将棋はノックアウトステージ開幕戦で関西を代表する漫才師、シャンプーハットとぶつかった。漫才師として最高の栄誉である上方漫才大賞を受賞したこともあるベテランコンビだ。
THE SECONDは100人の一般客が1~3点をつける300満点方式。結果、囲碁将棋は強豪中の強豪を277対252で退けた。
勝者コールを受けたあとも囲碁将棋は先輩を気遣い、控えめな態度を貫いた。そんな2人にシャンプーハットの恋さんが「負けた相手が自分が好きな後輩でよかった」と声をかけると、文田は人目もはばからず号泣した。
「吉本の芸人って、後輩には負けたくないって思いがめっちゃ強いんですよ。僕が逆の立場だったら、ムカついてたと思うんです。そうしたら、優しい言葉をかけてくれたので……」