散財、やけ食い、カラオケ……ストレスの発散の方法は人それぞれだが、そのひとつに「磨く」という行為がある。人知れず、夢中で何かを磨き上げることで得られるものとは。
スーパーで売っている巻き貝を磨いたら宝石のようにピカピカになったというTwitterでの投稿が話題を呼んだり、石を磨く「天然石磨きキット」や「原石磨きセット」が大人世代にヒットするなど、コロナ禍以降「磨く」という行為が密かなムーブメントになっている。
ストレスがたまったら「鍋を磨く」と言うのは、50代主婦のAさんだ。
「嫌なことがあったり、イライラしたりしたときに、鍋の焦げ目やフライパンの錆を、ひたすら磨き続けるんです。夕食後に録画したドラマを見ながら始めても、気がついたら画面は真っ暗になっていて、夜中になっていることもある。シンクを磨くときもありますが、疲労感が勝るので、やっぱり鍋がいちばんかな(笑い)」
Bさん(60代・パート)が最近夢中になっているのは、泥を丸めて作る「泥団子」。
「孫の家に遊びに行ったら、保育園で作ったという磨いた泥団子が置いてあったんです。すごく懐かしい気持ちになって、それから孫と一緒に公園に行って、砂場で泥団子を作りました。孫は途中で飽きちゃったけど、私は家に持ち帰ってひとりで磨き続けています。
サラ粉という細かい砂を使って手で丁寧に磨いていると、だんだんツヤツヤになって光沢が出てくるんですよ。石みたいに硬くなって、貴金属みたいにひかり輝いています」(Bさん)
Bさんのような人は少なくなく、ネット上では「泥団子の作り方」の紹介記事や動画が数多くアップされ、カラフルに仕上げるためにラメ入りのキットなどが販売されているほどだ。