安倍晋三元首相銃撃事件から間もなく1年が経とうとしている。この間、メディアで自民党と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関係を追及してきたのが、ジャーナリストの鈴木エイト氏だ。なぜ彼は、この問題を追い続けてきたのか。鈴木氏は新刊『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』で、そこに至る秘話を明かした。抜粋してお届けする。
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私がカルト問題にかかわることになったきっかけについて改めて詳細に記しておきたい。それは2002年6月、JR渋谷駅の改札口近くで統一教会が組織的に行っていた偽装勧誘を目撃したことに始まる。前日に日本テレビの報道番組『報道特捜プロジェクト』が同教団による組織的な正体隠し伝道の実態について放送していた。番組で取り上げていた「手相の勉強」「青年意識調査アンケート」を入り口とした勧誘の手口を観て義憤を感じていた私にとって、目の前で行われている偽装伝道を見逃すわけにはいかなかった。
考えるよりもまず先に体が動いた。鑑定士を名乗る信者の男女2人に捉まり手相を見せていた女性に「これは統一教会という宗教団体による偽装勧誘ですよ」と忠告した。「違いますよ」「何ですかあなたは」薄笑いを浮かべ反論する男性信者勧誘員。何とか解放させた後、周辺を見て回ると渋谷駅周辺にはターゲットを物色する統一教会勧誘員が数十人いた。捉まっている人に声をかけ、片っ端から救出した。
その後、仕事帰りや休日に時間を作っては渋谷駅周辺を見回って統一教会の偽装勧誘阻止活動をするようになった。統一教会に限らず街頭ではデート詐欺、募金詐欺といった様々な詐欺的勧誘が横行していた。カルト的な宗教団体による偽装勧誘が最も多く、怪しい現場を見つけては介入し阻止して回った。
“パトロール”の範囲は渋谷に留まらず新宿・池袋と拡がり、都内を中心に近県にも行くようになった。最初は単に嘘を吐いている勧誘員を問い詰め論破することに主眼を置いていた。だが次第に、偽装勧誘を阻止した後に信者とコミュニケーションを取るようになってからは、私の取り組みも変化していった。勧誘員もまた最初は偽装勧誘を受けマインドコントロールされた被害者だと気づいたからだ。被害者が次の被害者を生んでいくカルト問題の構造を知り、勧誘被害者を救出するだけで終わりとするのではなく、積極的に信者と話すことでカルト問題の複雑さや深刻さの理解に努めた。
最初に勧誘現場に遭遇した際、見て見ぬふりもできたのになぜわざわざ面倒くさいことに首を突っ込んで声をかけたのかと訊かれる。そんな時は、目の前で溺れている子どもを発見したような状況と同じだと答えている。そういうシチュエーションに遭遇したら誰しも後先考えず飛び込んで助けるはずだからだ。