オードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の半生を描いたドラマ『だが、情熱はある』

プロデューサーの河野英裕氏

最終回は「本当に迷っています」

 ナレーションで「これはふたりの物語。惨めでも無様でも逃げ出したくても泣きたくても青春をサバイブし、漫才師として成功を勝ち取っていくふたりの物語。しかし、断っておくが友情物語ではないし、サクセスストーリーではない」と謳われている。ならば、現在進行系の彼らの最終回をどこにもっていくのだろうか。

「本音を言うと本当に迷っています(※取材は5月中旬)。最初に全体像を組んだ時に考えたのは、以前やった『銭ゲバ』のような最終回を想定していました。つまり、“もしも”の世界を描く」

『銭ゲバ』の最終回では不遇な境遇で生まれた主人公が人を殺し、最後に自らも命を絶とうとしたときに、もし自分が幸せな家庭に生まれて優しい人生が送れたらというまったく世界観の異なる光景が描かれ、やがて主人公は死を迎える。主演の松山ケンイチの怪演は大きな反響を巻き起こした。同様に『だが、情熱はある』の最終回も、もしも2人が芸人にならなかった世界を描くことが想定されていたという。

「ただ、今はちょっと違うんじゃないかなって思い始めてます。それを果たして視聴者の方は見たいのかって。まだ結論は出てないです。

 本当に嬉しいのが、若林さんも山里さんも、ご本人が喜んでくれているというか、応援してくれていること。若林さんはドラマにすること自体は全然問題ないです、自由にして下さいっていう感じだったんですけど、最初は自分が前面に出ることはしないってスタンスだったんですよ。でも、始まると、自分がハスってるのはバカみたいだから全面的に宣伝しますってインスタにあげてくれたりして。(『たりないふたり』のプロデューサーの)安島(隆)さんに言わせると、それはドラマを気に入ってくれてるからだよって。

 やっぱり2人を好きな人を傷つけたくないし、失望させたくはない。と同時に、日本のお笑い文化を知らない方が見ても面白いと思える青春ドラマにしないと意味がないじゃないですか。その狭間で最終回の落としどころを考えているところです」

(了。前編から読む

【プロフィール】
河野英裕(かわの・ひでひろ)/『だが、情熱はある』プロデューサー。1991年日本テレビ入社。『野ブタ。をプロデュース』(2005年)、『マイ★ボス マイ★ヒーロー』(2006年)、『銭ゲバ』(2009年)、『妖怪人間ベム』(2011年)、『ど根性ガエル』(2015年)、『奇跡の人』(2016年)、映画『メタモルフォーゼの縁側』(2022年)など制作する。

◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。

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