みずから爆発を起こして防御や攻撃する「自爆」は、自分にも甚大な被害をもたらすことから、通常は忌避されるものだ。ところが日本では自爆を推奨するような働き方、自腹で自社商品の購入を強いる職場が存在している。働く人が足りないと日本全国で言われているのに、労働者を追いつめる悪習がなくならず、人手不足になっても、なぜ止まないのか。俳人で著作家の日野百草氏が、様々な職場での自爆を求める労働体験と現在を聞いた。
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「パンを買わされます。食パンです。そんなに何本も食べられるわけでもないのに」
全国に数多く展開する高級食パンの店、数多くのチェーン店やフランチャイズがしのぎを削るが、過当競争と流行り廃りによって苦戦している店舗も報じられるようになった。そして、そこではアルバイトに対する自爆営業、食パンの買い取りの強要まで行われていたと元アルバイトの女性が話す。
「少しくらいなら買ってもいいですけど、何本も食べません。それにだんだんエスカレートしてきて、なんのために働いているのかわからなくなり、怖くて辞めました」
高級食パンと銘打つだけに高価だ。それに「何本も食べられない」はその通りだろう。そもそも明らかな労働基準法違反だが、一部とはいえ高級食パンに限らず横行するのは「強要」ではなく「勧誘」であり、「自由意志」であるとすれば違法かどうかはグレーとなる。残念ながら、よほど悪質でなければ労働基準監督署も動かない、動いても逆に店に居づらくなるのが現場の現実だ。だからこの国から「自爆営業」はなくならない。
彼女が辞めてほどなく、その高級食パンの店は潰れたと話す。
自腹で買わせていたらバイトが来なくなった
自爆営業といえばコンビニエンスストア、かつては社会問題ともなった。
「恵方巻だ、クリスマスケーキだと散々買わされました。いい思い出ではないですね」
学生時代にコンビニでアルバイトをした経験のある40代男性が語る。ごく短い間とはいえコンビニのバイトであまり良い思い出はないとのこと。その原因こそ、自爆営業だ。
「恵方巻とかクリスマスケーキとか、いまもやらされているのでしょうか。ネットの噂ばかりですけど」
こうした自爆営業は匿名掲示板の時代から盛んに書き込まれていたように思う。