「探究心に火がつけば、子どもは自ら学び始める」がモットーの型破りなオヤジに育てられた3兄弟は、高校に通わずして京都大学に進学。徹底した管理教育の結果かと思いきや、オヤジがしたことといえば、一緒に本を読んだり紙飛行機を飛ばしたり、キャンプに行ったり。日々、遊びの中で親と子が“感動や体験の共有”に徹したその先に、最強の学びが待っていた──。受験も勉強も教えない教室として話題の『探究学舎』に迫る。【全3回の第1回】
子どもの頃、あなたは勉強が好きでしたか? こう問われて、胸を張って「はい」と答えられる人はどれくらいいるのだろうか。
昨夏に行われた子どもの生活と学びについての調査によれば、学習意欲を尋ねる「勉強しようという気持ちがわかない」という問いに対し、小学4〜6年生の半数を超える53.7%が「とてもあてはまる」「まああてはまる」と答えている。コロナ禍以前の2019年の調査では33.7%だったことを考えれば、一気に学習意欲が失われたといえる。(※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査2022」)
全国的に中学受験者数が年々増加しており、放課後も受験に特化した学習塾や毎日ノルマとして課される膨大な宿題に追われている。遊ぶ時間どころか睡眠時間さえも充分にとれず、疲労をため込んでいる子どもは、決して少なくない。
一方で、子どもたちが笑顔いっぱいで自発的に学んでいる場所が、東京・三鷹にある。その名は『探究学舎』。代表の宝槻泰伸さん(42才)は、2022年に『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)に2度出演するなど、しばしば雑誌やテレビでも取り上げられているので、ご存じのかたもいるだろう。
ここは、勉強のやり方や問題の解き方を教えるといった、世間一般のような学習塾ではない。しかも「成績アップも合格も目指していない」と泰伸さんは言う。授業の題材は宇宙・生命・元素・医療・数学・経済・歴史・芸術・ITと、一見、小学生にとっては難しそうな分野が並ぶ。
「幾何学」の授業では、ただ教科書通りの知識を詰め込むのではなく、日本の折り紙の技術が宇宙空間で活用されていることを、実際に折り紙を見たり触ったりしながら体感し、「元素」の授業では、どうやって元素記号が誕生したのかといった誕生ヒストリーに始まり、難しい化学式をヒントに元素模型を組み立てたりしながら、子どもたちの好奇心を刺激する。わかりやすくて楽しい映像で興味を引きながらも、しばしばそれを停止して、泰伸さんは子どもたちに「なぜこうなるでしょうか?」と投げかけて考えさせる。
「“なぜ?”“やってみたい!”を刺激しながら進めていくと、小学校低学年であっても、仕組みが実感として掴めます。中学生にとっても難しい理屈が、体験として入ってくるのです」(泰伸さん・以下同)