夫の亡き後も安倍家の地盤を守ろうと孤軍奮闘する安倍昭恵夫人だが、一周忌を前に、政界の無情に悲哀を噛みしめているようなのだ。安倍晋三・元首相の一周忌法要で施主を務める昭恵夫人は、ある予言をしていた。
「8万票取れば林さん(芳正・外相)は下関に入って来られない」。夫の弔い合戦となった衆院山口補選(4月)で、昭恵氏は周囲にそう語って安倍氏の後継者である吉田真次氏の応援の先頭に立った。
結果は吉田氏が当選したものの、得票は安倍元首相が獲得してきた8万超には及ばず約5万2000票にとどまった。
それから2か月後、予言は悪い方向に的中した。自民党本部は6月16日、定数是正で次の総選挙から4区の下関市・長門市と3区を統合して設置される山口新3区で安倍氏のライバルだった林外相を公認することを正式に決定し、“安倍家の城”を明け渡すことになった。
一か八かの反撃
この間、昭恵夫人は「自民党本部」と地元の「自民党山口県連」を相手に奮闘した。最大派閥の安倍派は、「たいへん大事な選挙区なので派としてしっかり死守する」(塩谷立・会長代理)と全面支援を約束し、昭恵氏はその塩谷氏とともに選挙区調整の責任者である茂木敏充・幹事長を訪ねて公認を直訴した。茂木氏は安倍内閣で経産相、経済再生相、外相を歴任するなど、安倍首相から重用されて出世してきた人物だ。
だが、うまくいかない。自民党の方針は、岸田首相の片腕で岸田派大幹部の林氏を公認する方向だった。
「しかも、執行部は林さんの地盤を盤石にするために安倍後継の吉田氏を、山口県を含む中国ブロックではなく、九州ブロックの比例代表に回すことまで検討している。そうなれば吉田氏は将来も下関から出馬するチャンスはなくなる。事実上の追放と同じだ」(自民党選対関係者)