患者一人ひとりに合わせてのむ期間も量も決められているはずの処方薬の中にも、長期服用で重篤な状態に至る胃腸薬がある。薬剤師の三上彰貴子さんが言う。
「本来は胃潰瘍や逆流性食道炎の治療に使われるプロトンポンプ阻害薬ですが、胸焼けや胃腸炎を訴える患者に簡単に処方する医師もいるようです。胃酸抑制効果が高く、添付文書には通常8週間までの投与と書かれています。
しかし治らず長くのんでいる人もおり、『難治性逆流性食道炎』という病名で3年以上など長期にわたり服用している人もいます。その中にはプロトンポンプ阻害薬が不要な症例も多いとか。長期間の服用によって、認知機能低下のリスクが高まるという報告もあるので、気になったら医師に相談してください」(三上さん)
実際に75才以上を対象にした研究で、プロトンポンプ阻害薬を日常的に服用している人は認知症リスクが約1.4倍高いというデータもある。松田さんは認知症に加え、骨折や血栓症のリスクも懸念する。
「米マサチューセッツ総合病院の調査によると、プロトンポンプ阻害薬を2年以上服用している女性は、股関節骨折になるリスクが35%以上高いことがわかっています。高齢者が入院・寝たきりになる原因の多くは股関節骨折なので、この薬が一因であることは明らかだと思います。尿路感染症や、エコノミークラス症候群の原因となる『深部静脈血栓症』が起こりうるという報告もあります。
にもかかわらず私の患者の中にも、別の専門病院にかかったときに、心臓病や糖尿病の薬とセットになって、かなりの確率で“おまけ”的に処方されるケースは後を絶ちません」(松田さん)
胃薬であるにもかかわらず、のみ続けた結果、胃にポリープができることもあるという。
「ある50代の男性は、胃腸科で処方されたプロトンポンプ阻害薬を10年以上のんだ結果、胃全体にポリープができていました。すぐに薬をやめて、漢方薬と重曹に切り替えたところ、3か月ほどですべてのポリープが消失しました」(松田さん)
※女性セブン2023年7月27日号