【週刊ポスト連載・医心伝身】食道は横隔膜に空いた食道裂孔という孔を通り、胃と繋がっている。そして、食道裂孔ヘルニアとは食道裂孔が緩んで広がり、胃の一部が胸部に飛び出す病気だ。主な原因は加齢で、高齢者の患者が多い。中には胃の大部分が胸側に飛び出し、心臓や肺を圧迫、呼吸困難や胸痛を生じる例も。治療は腹腔鏡手術を行ない、再発予防のため、胃を腹壁に固定する方法が実施されるようになった。
口で摂取された食物は食道から胃に運ばれる。その際、食道は横隔膜に空いた食道裂孔という孔を通じて胃と繋がる。このとき、横隔膜は下部食道括約筋を絞めつけ、胃の内容物の逆流を防いでいる。
しかし、横隔膜は筋肉であり、加齢で筋力が低下すると食道裂孔も緩み広がりやすい。この緩んだ孔から胃が胸部に飛び出すのが、食道裂孔ヘルニアと呼ばれている疾患だ。
加齢が主な原因のため、最近では高齢化とともに患者数は10倍以上に急増。他にも肥満や慢性的な咳、腰が曲がるなど腹圧が上がるせいで発症や重症化するケースもある。慈恵大学病院上部消化管外科の矢野文章教授に聞いた。
「食道裂孔ヘルニアは大きく3つに分けられます。胃と食道の境目が胸部に飛び出す滑脱型、胃の壁の一部が食道の脇を通って胸側の横にハミ出す傍食道型、それから胃が上と横に大きく飛び出す混合型です。
3センチを超える滑脱型は胃の内容物が逆流しやすく、結局は食道が炎症を起こし、逆流性食道炎になることがあります。また胃の大部分が胸部に飛び出して心臓や肺を圧迫、胸痛や呼吸困難などを引き起こし、そのせいで動けなくなる症例も報告されています」
食道裂孔ヘルニアが疑われる場合は胃カメラ以外に、CTによる画像検査で飛び出した胃の位置や食道の状態を調べる。胃が食道裂孔より大きく飛び出している場合は元の位置に戻す腹腔鏡手術を行なう。傷口は5か所だが、切開口は3~12ミリと小さい。