具体的には胃を2本の鉗子で引っ張り、元のお腹の位置に戻す。その後、広くなった食道裂孔を縫い縮め、さらに胃の上の部分(胃底部)を襟巻状に、食道に巻き付ける噴門形成術を行ない、食物などの逆流を防ぐ。
「食道裂孔ヘルニアの再発率は3センチ以下の滑脱型で10%、3センチ以上の滑脱型では22%、混合型は23%のため、2011年からメッシュ補強を実施していました。これにより滑脱型の再発率は、ほぼゼロになりましたが、他の型では効果が見られず、メッシュに加えて胃を腹壁に固定する方法を追加したのです。これで再発率が低下したので、今年の1月に異物であるメッシュをやめ、腹壁固定のみの治療に取り組んでいます」(矢野教授)
術後の食事の際に、鈍い痛みや消化不良が起こることもあるが、3か月程度で収まる。現在、食後などに高頻度の呼吸困難を起こしている方には循環器に加え、食道裂孔ヘルニア検査の実施を勧めたい。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年7月21・28日号