一昨年、亡くなった脚本家の橋田壽賀子さんが設立した財団の元職員が、現金約1100万円を着服した疑いで逮捕された。元職員は20代後半から30代前半でバブルを経験した世代。コラムニストで放送作家の山田美保子さんが、この事件を通して“第1次ブランドブーム”について分析する。
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日々、さまざまなニュースを目にするとき、自分と同年代の女性が主語になっていると心がザワザワしませんか?
もともと私は病的とも言うべきエンパス(=共感力が人並み外れて高い)。なので、この人はどうしてこんなことになってしまったのだろう……もし私がそういうことに遭遇したらどうしただろうか……などと延々考えこんでしまう悪癖があるのです。
7月12日、業務上横領の疑いで警視庁麹町署に逮捕された大堀たまみ容疑者は、まさに私と同じ66才。2021年に亡くなられた脚本家の橋田壽賀子さん(享年95)が設立した一般財団法人「橋田文化財団」の元職員と知らされ、より前のめりになってニュースの文言に聞き入ってしまいました。
麹町署によると橋田先生が亡くなられた後に財団が帳簿などを確認した際、不正な支出が発覚。経理担当だった大堀容疑者は、2017年4月下旬〜2020年12月下旬頃までの間に架空の領収書を作成し、12回にもわたり財団事務所内の金庫で保管していた現金約1100万円を着服、横領。ほかの手口でも計数千万円を横領していたとみられ、同署は余罪を捜査しているとのことです。
「橋田賞のパンフレット代」として架空の請求書を作るなどの手口だったと知り、エンタメ界の末席に身を置く私としては余計に「彼女の罪は深い」と思ってしまいました。
同財団のホームページによれば、「橋田文化財団」とは「日本人の心や気持ち、生活の人間関係を温かく描き出し、感動を与える創作活動や優れた執筆活動を支援し、(中略)我が国の文化の発展に寄与することを目的として設立された」と記されています。
コロナ禍、あらゆる業界が大変な苦労をしてきたと思いますが、エンターテインメント界、そしてテレビ界も同様でした。そんな中、「橋田賞」は、第1回の平成4年度から一度も休むことなく、橋田先生が逝去されても、コロナで世の中が停滞しても、財団の精神や選考に“ブレ”をまったく感じさせることなく、懸命に贈賞を続けてこられたのです。