3人の関脇(豊昇龍、大栄翔、若元春)のトリプル大関昇進期待で盛り上がり、大相撲7月場所会場のドルフィンズアリーナ(名古屋)には初日から満員御礼の垂れ幕が下がった。しかし、終盤戦を待たずに主役級の力士が相次いで休場すると、新たなスター誕生を熱望する相撲協会が期待を寄せていた東前頭4枚目の朝乃山も休場からの再出場となるなど、ものごとは協会の思惑通りには進まない。
初日2日前の取組編成会議で大関・貴景勝が休場届を提出し、さらに初日の朝には新大関の霧島が右肋骨骨挫傷のため休場が決まった。1横綱0大関で場所は幕を開け、霧島が4日目から途中出場したものの、今度は横綱・照ノ富士が3日目の翔猿戦で両膝の古傷を痛めて休場に追い込まれた。担当記者が言う。
「ひとり横綱の照ノ富士のケガの具合は心配です。これで引退が早まったかもしれない。来場所は休場でしょうが、貴景勝もカド番になるし、新大関の霧島もいきなり綱渡りの土俵ですからね。協会としては興行面からも3関脇の大関昇進を期待している状況だったが、そうしたなかでも、“次のスター”の本命は朝乃山だった。
右四つのしっかりした型を持ち、押しも寄りもできる。横綱相撲が取れる大関候補として期待を集めていたわけです。大関経験者ながらスキャンダルでの6場所出場停止で三段目まで番付を下げたものの、復帰後もとにかく人気がある。富山出身で名古屋に近いこともあり、今場所は朝乃山の一番になると館内が応援タオルで埋め尽くされていたほど。売店でもグッズの売れ行きナンバー1でした」
今場所、東前頭4枚目で活躍して三役復帰を果たせれば、9月場所、11月場所を足掛かりとして、最速のスケジュールで来年1月場所を大関復帰の懸かる場所にできるはずだった。ところが、1横綱1大関が不在かつ、新大関も手負いというなかで、今場所のクライマックスとして朝乃山と3関脇の総当たり戦が始まった7日目のことである。豊昇龍戦に上手投げで敗れた際、朝乃山は左上腕二頭筋部分断裂のケガ(局所安静4週間)を負って8日目から休場となってしまった。若手親方が言う。
「8日目には大栄翔との対戦が組まれていたが、大関昇進の“壁”になるどころか不戦敗でアシストするかたちに。12日目から再出場となったものの三役昇進は絶望的で大関復帰へのスケジュールは白紙に。ケガが悪化して来場所を休むことになれば、十両再転落さえある。
6場所出場停止があったから休場場所の過ごし方は慣れているとはいえ、今や大関時代のパワーや馬力はない。休場の今後への影響を心配だ」