復帰後は負け越しがなかったが、これまでは幕下、十両、幕内下位の力士が相手だった。先場所は前頭14枚目で優勝争いに加わり、12日目から役力士との対戦となると、横綱・照ノ富士らに連敗した。前出・若手親方はこう続ける。
「そうした先場所の戦いぶりから、どこまで地力があるのか判断できなかった。今場所は上位陣と総当たりとなる地位で、執行部もどれだけ力を発揮するかに注目し、期待していた。ただ、前半戦を終えた後の初の上位戦となった豊昇龍戦は内容としては完敗だった。
大関経験者の高安や正代、御嶽海、栃ノ心(今年5月に引退)を見てもわかるように、大関から陥落するとその後に大関にカムバックするどころか、下がった番付通りの相撲になってしまう現象が起きる。朝乃山は出場停止による大関陥落したとはいえ、幕内下位や十両で低迷する期間が長くなると、“その程度まで”の力士になってしまうという懸念を口にする親方衆は多い。順調に回復しても、大関再昇進への道はかなり遅れることになるだろう」
人気・実力・取り口の充実などを備えた次のスターは、そう簡単には誕生しなそうだ。
※週刊ポスト2023年8月4日号