「死んでから知ったことが、いろいろあります」

 万平さんによれば、伊丹さんは「急に凝る人」だったらしい。

「食べものでも映画のテーマでも、調べて、調べて、飽きるまで調べて、何らかの成果が出たところで、じゃあ次行こう、と別のものに興味が移る。ダイエットも、自然食も、そういう感じだったのかな、と思います」

 ダイエットを始めると、オリジナル料理の「驚異のなす丼」など野菜料理を食べ続けた。玄米のお弁当を学校に持っていくと茶色いご飯を友だちにからかわれ、「玄米は体にいいんだ」と親に言われたとおり言い返しはしたが、子ども心にちょっと複雑だったという。

 記念館の運営にかかわることになり、万平さんは「父ちゃん」「母ちゃん」と呼んでいた両親を「伊丹さん」「宮本さん」と呼ぶようになった。

 ちなみに万平さんは、伊丹さんから「マンペン」と呼ばれていた。長男の万作さんは伊丹さんの父で映画監督の伊丹万作にちなんだ名前で、次男が生まれたときは、万吉、万平、万次郎と3つ候補があり、たまたまやってきた写真家の浅井愼平さんが、「『ぺい』がいいよ」と言って万平に決まった、というのが伊丹さんから聞かされた話だ。

「できすぎてて、『ほんとかそれ?』って思いますよね。『浅井愼平が来て』じゃないんだよって(笑い)」

 本には、伊丹十三の「食」に関するエッセイや影響を受けた人たちの対談、再現レシピ、宮本さんのインタビューなども収められている。伊丹さんが描いた、台所道具の本質をとらえたイラストの、ただごとでない美しさに驚愕する。

 俳優、映画監督、エッセイストとして知られるだけでなく、デザイナーやテレビマンとしての仕事にも目覚ましいものがあった。今年6月には今野勉『テレビマン伊丹十三の冒険』(東京大学出版会)も出た。

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