タクシーに乗るたび、屋台に行くたび、インタビューしてテープレコーダーを回す、考現学のようなことをしていた時期もあり、膨大な取材テープが残されているそうだ。
「伊丹さんが死んでから知ったことが、いろいろあります。記念館にはたくさんの資料があって、絵がうまいのはもともと知ってましたけど、小学校のころからめちゃくちゃうまいんですよ! 伊丹さんの面白さを伝えてくれる人がいまもいてくださって、新しい読者につながっているのはありがたいです」
『伊丹十三の台所』/つるとはな編集部・編、つるとはな/2860円
『お葬式』『タンポポ』『マルサの女』……映画監督として数々のヒット作を送り出した伊丹十三さんが亡くなったのは1997年のこと(享年64)。さまざまな分野で活躍した伊丹さんについて《この本では、食にまつわるエッセイをひもときながら、いかに伊丹十三が食べること、作ることを楽しんだか。また、それをどんな言葉で著していたかをお伝えしようと思います》と「はじめに」で綴られている。今回インタビューした池内万平さんや妻・宮本信子さんのほか、ゆかりのある人が語る伊丹さんの話、伊丹さん愛用の台所道具や器、レシピなども収録し、伊丹さんの美意識と、伊丹さんへの愛情が隅々にまで溢れた一冊。
【プロフィール】
池内万平(いけうち・まんぺい)/1975年東京都生まれ。伊丹プロダクション代表取締役社長。伊丹十三記念館アドバイザー。幼少期には子役として『お葬式』『タンポポ』に出演。『伊丹十三選集』では編者を務めた。
伊丹十三(いたみ・じゅうぞう)/1933年京都府生まれ。映画俳優、デザイナー、イラストレーター、エッセイスト、映画監督。『ヨーロッパ退屈日記』『女たちよ!』『ぼくの伯父さん』など著書多数。1997年12月20日没。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2023年8月3日号