元気に自立して過ごせる期間を「健康寿命」というが、それに欠かせないのが「耳」の健康だ。耳の聞こえの改善に東洋医学を試してみる手がある。鍼灸師で源保堂鍼灸院院長の瀬戸郁保氏が解説する。
「人間の体には東洋医学におけるエネルギーにあたる『気血』を運ぶ『経絡』が縦横に走っていると考えられており、ツボを押すことで経絡を通る気と血液の巡りがよくなるとされています。耳につながるツボを押すことで耳付近の血流を促したり、神経の疲れを取る、耳鳴りを抑えるといった効果が望めます」
掲載した図を参照しながら耳に効くツボを解説していくが、まずはツボ押しのコツを瀬戸氏が説明する。
「ツボを押す際、“ツーン”とした鈍い痛みを感じる箇所を探してください。その箇所を指の腹で5秒かけて押し、その状態で5秒キープ、またゆっくりと5秒で力を抜いていきます。3回を1セットとして、1日に何度押してもかまいません」
まずは、両目の眉頭にある攅竹(さんちく)だ。
「多くの人が目が疲れた時に何気なく押さえるツボで、眼精疲労に効果がありますが耳にもいい。聴神経などを整え、耳を含めた頭全体の血流を促します。また、副鼻腔炎にも効果が望めるツボで、鼻と耳をつなぐ耳管に作用することで耳の聞こえの改善につながります」(瀬戸氏)
両耳の入り口付近に位置する聴宮は、耳鳴りなどの改善が望める。
「聴宮(ちょうきゅう)は、口を開けた時に耳の入り口付近で少しへこむ位置にあります。耳鳴り、耳の聞こえに効果を期待できます。ヘッドホンで音楽を長時間聞いたり、長電話で耳が疲れた時などに耳の血行を促して疲労を取る効果が望めます」(瀬戸氏)
耳たぶの裏にある翳風(えいふう)は、聴力のアップにつながるという。
「耳たぶの後ろでくぼんだ場所に位置します。翳風の周辺には耳の神経が通っており、押すことで聴神経を整えます。また、ここを押すことで内耳にも影響し、内耳のリンパ液の流れの改善なども期待でき、めまいにも効果が望めます」(瀬戸氏)
耳から位置は離れるが、へそから指3本分下にある石門(せきもん)は体中の気が集まるとされる丹田に位置し、押すことで停滞している精気を不足している体中に巡らせ、耳まで届くことで聞こえを改善するという。