2018年6月9日、走行中の新幹線車内で発生した無差別殺傷事件(概要は前編参照)。見ず知らずの男性1人を殺害、女性2人に重症を負わせた犯人、小島一朗とはいったいどのような人間なのか。
事件の翌年、2019年11月28日から公判がはじまると、常人では理解し難い小島の言動、人間性があきらかになっていった。そして、同年12月18日、横浜地方裁判所小田原支部は、被告人・小島一朗に無期懲役を言い渡す。
「バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!」──判決を聞いた小島は、万歳三唱した。皮肉にも、「刑務所に入りたい」「無期懲役になりたい」という凶悪殺人犯の願いを丸々叶える形で、裁判は終結したのだ。刑務所という「安寧なわが家」を手に入れるため、小島は緻密な計算を働かせていた。それは、第四回公判で放った信じ難い台詞にも表れている。
写真家・インベカヲリ★氏によるルポルタージュ『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』(KADOKAWA)では、往復書簡や面会、裁判の傍聴取材などを通し、小島の生い立ちや思考を詳らかにしている。その一部を抜粋し、紹介する。【前後編の後編。前編から読む】
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「命が惜しくてたまりません」
死亡したZ夫さんの母親と妻の供述調書を受けて、第四回公判では、再び検察側の被告人質問が行われた。そこでは小島の身勝手な言い分が滔々と語られることになった。
検察「先日の話では、『三人以上殺すと死刑になるから、二人か、一人プラス一人に重傷を負わせないといけない』と話していましたね。死刑は避けたかったのですか?」
小島「そうです。刑務所ではなく拘置所で過ごすことになるから」
検察「死にたくない?」
小島「その気持ちも、もちろんございます」
検察「命を惜しく思ってる?」
小島「はい。命が惜しくてたまりません」
検察「命の大切さがわかっているなら、他人の命についてはどう思うんですか?」
小島「想像することはできますが、自分の欲求を満たすことを優先しました」