ランに惹きつけられた本当の理由
これだけ熱くなっていただけに1977年7月17日の解散宣言はショックでした。
仲間のひとりが、解散宣言が飛び出た日比谷野外音楽堂に行っていて、公衆電話で知らせてくれました。その日は布団の中でまんじりともせずに朝を迎え、日比谷から帰ってきたひとりを待って6時に仲間の家に集合し、学校に行くまで2時間ぐらい、みんなでただ呆然としていました。
結局、その後はファンの結束によって解散まで一生懸命応援しようと盛り上がり、全国9箇所で行なわれたファイナルコンサートも、後楽園球場での最後の「ファイナルカーニバル」を含め7ステージに行きました。
そこで燃え尽きてしまい、高3の1年間はやることも目標もなく、抜け殻のようでしたね。
高校卒業後、芸大を目指して上京するのですが、3浪で挫折し、出版の世界に入りました。実はそれも、いつかランに会えるのではないかと思ったからです。キャンディーズが僕の人生を100%決めたんです。
実は個人的な後日談があります。
3歳のときに両親が離婚し、僕は父親に育てられました。その後母親とは一切接触がなく、写真も残っていなかったので、顔も覚えていませんでした。自分が32歳になったとき、52歳になっていたその母親と会いました。そのことを父親に報告すると、ひと言目にこう言われました――「伊藤蘭に似てただろ」。そして母親の若い頃の写真を出してきました。驚きました。確かに似ているんです。そうか! と腑に落ちましたね。自分がランに惹きつけられたのはこの母親のおかげだったのかって。
【プロフィール】
石黒謙吾(いしぐろ・けんご)/1961年石川県金沢市生まれ。星稜高校卒業。東京芸大美術学部を目指すも3浪で挫折。著述家、編集者として、映画化された『盲導犬クイールの一生』を始め著書、プロデュース・編集は280冊を超える。2008年から新生・全国キャンディーズ連盟(通称・全キャン連)代表、2019年から全国伊藤蘭連盟(通称・全ラン連)代表。
構成/鈴木洋史