部屋を興せていない理由
2022年2月5日に両国国技館で行なわれた「年寄中村襲名披露大相撲」には、髷にハサミを入れる2人の子供の姿はあったが、A子さんの姿はなかった。協会関係者が言う。
「元・嘉風の中村親方は部屋を興す予定だといわれてきました。2022年4月に尾車親方(元大関・琴風)が定年を迎えたことによる部屋閉鎖に合わせて、先輩で同じく部屋付きだった押尾川親方(元関脇・豪風)とともに中村親方も独立すると見られていた。
中大出身の押尾川親方と日体大出身の中村親方は手が合わないことで知られている。中村親方は、アマ横綱のタイトルを手にしたが、3年の時だったことで幕下付出の特権が使えず、前相撲からスタートした苦労人。現役時代は幕下15枚目格付出スタートの押尾川親方に厳しくされた経緯もあり、2人ともそれぞれ尾車部屋の力士を引き連れて部屋を興すとされていたし、成功するのは苦労人の中村親方といわれていた。しかし、結果として部屋を興したのは押尾川親方だけだった。
中村親方は尾車部屋から力士8人、呼び出し1人を連れて二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)が率いる二所ノ関部屋に合流。その後、日体大から大の里はじめ3人を入門させている(大の里は元・稀勢の里を慕っての入門ともされる)。いずれ二所ノ関部屋から内弟子を連れて中村部屋として独立するといわれているが、いまだに先は見えていない状況です」
ひとつのネックは資金面だという。元・嘉風の中村親方が引退する原因となったのが、故郷・佐伯市(大分県)での合宿中、市のPRのために行なった渓谷でのキャニオニング(渓流下り)での事故で負った右膝外側側副靱帯損傷だった。その後、市長に4億8100万円の損害賠償を求める裁判を起こしていた。「この裁判の影響で、断髪式では地元・佐伯市はじめ多くの後援会から支援を受けることができなかったといわれている」(前出・協会関係者)というのだ。