そして、もうひとつのネックが、力士の第二の人生に不可欠な「おかみさん」が不在というポイントだという。相撲担当記者が言う。
「部屋を興すにはおかみさんの存在が欠かせないとされています。未成年の弟子を育てるためには、ひとつ屋根の下で生活することになる。親方は相撲を教えるが、おかみさんは生活全般の指導をする。親方が怒鳴り、おかみさんがフォローする。これがセットになるという慣習です。弟子にとって親方は東京の父、おかみさんは東京の母。力士の結婚式にも“両親”として出席するほど。部屋の運営のなかではおかみさんが弟子と一緒に部屋のチャンコの味を作り、金庫番も務めることが多い。おかみさんがいない部屋には弟子の両親が安心して預けることもできない。最近はアットホームな部屋で強い弟子が誕生している傾向もある」
元・嘉風のケースでも、A子さんが部屋を興すに際してのおかみさんとして役割を果たすことが期待されていたわけだが、引退後、離婚に至ってしまったのである。相撲ジャーナリストが言う。
「3歳年上で、フラワーアレンジメントのショップなどを東京や神戸で経営していた奥さんのA子さんだが、しっかり女房で、部屋のおかみさんとしては最適じゃないかといわれていた。あまりに奥さんがしっかりしていて、嘉風は完全に尻に敷かれている様子でした。関取は部屋の近所や両国周辺に住むことが多いが、嘉風はA子さんの希望で二子玉川に住んで、そこから電車で清澄の尾車部屋まで朝稽古に通っていたほどです。
A子さんは引退会見で花束を持って子供たちと会見場に駆け付けたが、その一方で大分での事故を相当に強く悔やんでいたといい、4億円訴訟にはA子さんの意向もあったという。そうした夫婦関係が、コロナ禍によって断髪式が先送りされるなかで、破綻に至ってしまったということではないか」
そして、離婚が成立してから半年も経たずに今回の事件が起きた。全容が解明されることはあるのだろうか。