1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、夏の2歳重賞に挑む陣営の思惑についてお届けする。
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夏競馬も終盤に入り、6月以降にデビューした2歳馬による芝の重賞、2歳ステークスが行なわれます。今週は新潟(1600m)、最終週は札幌(1800m)と小倉(1200m)です。距離もコースもバラエティに富んでおり、早々と勝ち上がって前途洋々のエリートたちの出世争いのようにも思えます。
しかしエリートたちの目標はここではなく、あくまでも来年春のクラシック。牡馬では皐月賞とダービー、牝馬では桜花賞とオークスです。大舞台で持てる力を発揮できるよう、逆算してレースを選んでいくという考え方です。いくつかのレースを使っていく過程で、例えば長い距離の方がよさそうだったらオークスやダービーに照準を定めるし、牡馬で2000mは長いなと思えば、目標をNHKマイルカップに変更したりします。
ここ数年は猛暑ということもあるので、ここに出走させるかどうかは慎重な判断が必要なところではないでしょうか。スピードは非凡でも若い馬はやはり体力がつききっていません。人間も幼い頃はしょっちゅう熱を出したりお腹をこわしたりしたけれど、小学校高学年ぐらいから寝込まなくなったりするでしょう。成長するにしたがって跳ね返すだけの体力ができてくるのは同じなのかもしれませんね。
もちろん暑さにもめげずに元気いっぱいならば、2歳重賞のタイトルを獲りにいくという選択肢もあるけれど、やはり来年春に向けての賞金加算の面が大きいと思います。
かつてこの時期の2歳戦は短い距離ばかりでしたが、徐々にクラシックを頂点とする競走体系が整備されてきました。
札幌は1997年から1800mになり、4年目にジャングルポケットが勝って翌年のダービー馬に。近年ではソダシやジオグリフがクラシックホースになっています。
新潟は2002年から1600mになってクラシックへつながり始めました。僕はこのレースで2回勝たせてもらっています。とくに2007年のエフティマイアは師匠である矢野進先生の管理馬で勝てたので特別な思いがあります。矢野厩舎の馬で重賞を勝つのは僕にとって2012年ぶりのことでしたし、矢野先生にとっては久々の重賞勝ち。しかも翌年勇退されたので、最後の重賞勝ちでした。この馬は桜花賞、オークスどちらも2着に頑張ってくれました。