巻き爪は爪の両端が内側に強く彎曲し、ときに痛みを伴う。原因は足に合わない靴や加齢による骨の変形などで、爪に慢性的な外力が作用し、生じてしまう。治療は痛みを取ることが最優先だ。皮膚を圧迫、あるいは刺さっている爪を適切に切る。他に矯正具の装着により、徐々に爪の彎曲を改善させる治療もある。今年の春に爪を軟らかくする外用薬が発売、治療期間の短縮が期待されている。
巻き爪は中高年の女性に多く発症するが、男性も増えてきている。原因は靴や隣の指、地面など上下左右から爪に外力が作用することや加齢に伴う足の骨の変形も関係している。足の親指に生じることが多く、爪の両端が皮膚にめり込み、その痛みで歩くのが困難な例もある。厄介なのは再発する頻度が高いことだ。
他にも肥満の男性の場合、お腹が邪魔をして足先が見えにくいため、つい深爪をしてしまう。その結果、爪の側縁にできた爪のトゲが皮膚に刺さって炎症を起こし、陥入爪を発症することもある。
慶應義塾大学病院皮膚科で、爪外来を担当する齋藤昌孝医師に聞いた。
「巻き爪は彎曲の程度よりも、痛みや違和感があるかどうかで治療の必要性などを判断します。気をつけたいのは痛みのせいで親指を庇って歩くと他の指に負担がかかったり、歩行のバランスが崩れたりして膝や腰などにも痛みが出ることです。爪は皮膚の一部ですから、治療などは皮膚科に相談してください」
治療は痛みを速やかに取るために、爪の的確な場所を切る。次に痛みが取れたところで、爪の矯正治療を始める。齋藤医師が担当する慶應義塾大学病院皮膚科の爪外来では製薬会社と共同で巻き爪矯正具『巻き爪マイスター』を開発、今では全国で幅広く使用されている。この矯正具は両端のフックを爪に引っ掛けて固定し、超弾性合金ワイヤによって、少しずつ彎曲を改善させてゆく。
治療期間は平均3~6か月程度かかり、矯正治療は自由診療として扱われ、初回治療費は矯正具込みで8000円から1万5000円程度だ。
また今年の春に巻き爪用外用薬(商品名:リネイルゲル10%)が発売された。有効成分のアセチルシステインが、爪を軟らかくする効果を発揮する。さらに、その効果で再発までの期間を大幅に延ばすことも可能になったのだ。