女性同士で助け合ったり、絆を深めようとする「シスターフッド」と呼ばれる概念が注目されているなか、「憧れの女性」の生き方を参考にする女性も少なくない。作家・山内マリコさんは、田嶋陽子さんについて“人間としてかっこいい”と話します。山内さんが、田島さんの魅力について語ります。
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30代のときに読んだ田嶋陽子先生(82才)の著書『愛という名の支配』は衝撃的でした。お母さまとの関係や深い傷になった出来事など、つらい実体験を明かしながらフェミニズムに辿り着いた軌跡がつぶさに書かれていて。女性学の理論というと難しいですが、田嶋先生が苦しみにとことん向き合い、考え抜いた過程が正直に書かれていたので、スッと腑に落ちたんです。
私の世代は、中高生の頃に『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)を見ていたのですが、そこでの田嶋先生は男性論客に噛みつきバッシングされる役回りを課されていました。改めて当時の番組を見直すと、田嶋先生は常に冷静で理路整然。なのにヒール(悪役)に見えるような意地悪な演出をされていたことに気づきました。
2019年にフェミニズム雑誌で責任編集を務めることになり、もともと田嶋先生のファンだった作家の柚木麻子さんと「We LOVE田嶋陽子!」という特集号を作りました。いまの若い女性たちが純粋に憧れられる、“かっこいいフェミニスト”のロールモデルになってほしい、誤解されたイメージを刷新したいと思ったんです。
初めて会った田嶋先生はとにかく「かっこいい」の一言。女らしさや男らしさを超越した「田嶋陽子」そのもので、最初から心をオープンに話してくださいました。へりくだった言い回しはせず、「男はズルいのよ」の一言で既得権益にあぐらをかく世のオジサンたちをスパッと斬る。その姿はまったく裏表なく公明正大、著書の内容ともテレビでのお話とも一致していて、そこにもすごく敬意を抱きました。メディアに出ているかたで、オンとオフでここまで言動がブレないかたって、いないんじゃないかと思います。
「部屋の写真を撮らせてください」とお願いすると「散らかっているからイヤ」と一瞬で切り捨てられる一幕もあって……(笑い)。愛想笑いで誤魔化したり、断り切れずに嫌々引き受けてしまう、なんてことがないんだなぁと。人にどう思われても構わない、常に“自分らしくある”ことを体現されていました。