「We LOVE田嶋陽子!」が出版されてから4年が経ち、『VOGUE』や『ELLE』などハイブランド誌で田嶋先生が特集されているのを見るたび、歓喜の声を上げています。1990年代の女性たちが田嶋先生の存在に励まされたように、いままた、田嶋先生のパワーが必要とされているんだなと思います。
女性を取り巻く状況は大きく変わりつつあります。たとえば以前は、「女同士はいがみ合って男を取り合うもの」とされていて、ドロドロした物語が定番でした。私はそうじゃない女同士の友好的な物語を書いてきましたが、ずっと名前のないジャンルでした。けど最近は、女同士の連帯や絆を意味する「シスターフッド」という言葉が一般的になり、ひとつのジャンルになりつつあります。
とはいえ私も若い頃は、“恋愛至上主義”が刷り込まれていたこともあり、女友達に苦手意識がありました。でも大人になるにつれ、同性の友人を大切にする“友達至上主義”の方が、自分自身を大切にできるし、幸せだし、居心地がいいとわかってきて、考え方が変わりました。価値基準が変わると、それまでの息苦しさや生きにくさがなくなり、自分のことを好きになれました。女性が自分で自分を幸せにできる考え方を、理論化したものに、フェミニズムという名前がついているんだと思います。
そして、フェミニズムはあくまで自己解放する手がかり。田嶋先生は、「母に抑圧されて46才まで生きた気がしなかったので、その倍の92才まで自分らしく、思いのたけ元気に生きる」と公言されて、ドレスを着てシャンソンを歌ったり、書アートを楽しんでいらっしゃる。田嶋先生を見るたびに、まずは「女」というしがらみを解き放ち、本当の自分になれば、その先の人生がもっと自分らしく楽しくなるのだと、心動かされます。
悩みや苦しみに向き合って、悔いのない人生を送っている人は輝くのだなと、身をもって教えてくださる田嶋先生はやっぱりかっこいい存在なのです。
【プロフィール】
山内マリコ(やまうち・まりこ)/作家。1980年、富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。2012年、初の単行本『ここは退屈迎えに来て』を刊行。ほかにも映画化された『あのこは貴族』、松任谷由実の少女時代を小説にした『小説ユーミン』など著書多数。
※女性セブン2023年9月14日号