多くの医師たちが「薬で治療する必要がない」と声を揃えたのは高血圧も同様。
「日本における血圧の基準値は世界的に見ても厳しく、収縮期血圧の目標値が130mmHgとされています。確かに降圧剤は一時的に血圧を下げますが、脳卒中、心筋梗塞など命にかかわる病気の予防効果は認められていません。一方、脳梗塞や低血圧による失神など重篤な副作用が報告されています」
日常で多用する薬にも多くの医師たちが「処方されたくない」と回答。鎮痛剤の「ロキソプロフェンナトリウム水和物」にも、副作用を懸念する意見が相次いだ。
「疼痛緩和の効果は期待できますが、肝障害、胃腸障害などの副作用のリスクが高い。喘息がある場合は、喘息発作やアナフィラキシーショックが起きることもあります」(朝倉医師会病院・佐藤留美さん)
ロキソプロフェンと同様に疼痛治療を目的とした薬である「プレガバリン」には、むくみや倦怠感、めまい、ふらつき、不眠などの副作用がある。望クリニック院長で整形外科医の住田憲是さんが解説する。
「プレガバリンは神経に作用する薬で、なかなかとれない腰や膝の痛みに処方されることが多いのですが、痛みの原因が神経の障害であることは極めて少なく、効果を実感できないのに副作用に悩む患者が非常に多い。そもそも整形外科の痛みは、MRIを撮って調べてみても原因が不明であることが大半です。にもかかわらず、プレガバリンをはじめとして効果が期待できない薬が大量に処方されている現状があります」
日本初の「薬やめる科」を設けた松田医院和漢堂院長の松田史彦さんは、向精神薬が痛み止めとして多用されている現状を危惧している。
「脳内の“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンを増やす働きのあるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は、本来はうつ病の薬ですが、最近は慢性腰痛などにも手軽に使われています。しかし副作用をみると、眠気、めまいのほか、不安、錯乱、視力障害、自殺企図など危険なものが多く報告されています」