警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、暴力団組織で出回る「怪文書」について。怪文書が出る背景にはどんな事情があるのか。
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ヤクザといえば恐喝や恫喝などで相手を脅して貶める目的で、怪文書を出す側にいると思うかもしれない。だが実際、ヤクザ社会では一般企業などより怪文書が出回ることは多いのだ。
先日もある指定暴力団の名前で「抹消再通知」なるものが送られてきた。赤字で書かれた再通知のタイトルに下には、その人物の所属である下部団体の組織名とその指定暴力団での役職が書かれていたが、そこを見て思わず噴き出してしまった。「元若者」と書かれていたのだ。おそらく元若頭と書くつもりだったのか、それともからかって愚弄するつもりだったのか。とにかく最初の一行を読んだだけで、これは怪文書だと思わせるものだった。
氏名、年齢は赤字だ。ヤクザ社会では日常的な通達など組織内の連絡事項は、電話やメールのことが多い。しかし破門状や絶縁状など内外に知らしめる必要がある場合は、通常、通知として文書が出されている。破門と絶縁には区別があり、破門は一時的な追放処分であるが、絶縁は二度と戻ってこれない永久追放とされている。破門状には2種類があり、タイトルや名前など重要部分が赤字の物と黒字の物がある。一般的な破門状は黒字で、こちらだと場合によって復帰が可能。だが赤字の破門状が出されてしまうと組織への復帰は不可能となる。
抹消再通知なるタイトルは赤字だったので、復帰は不可能と言いたかったのだろう。通知内容にはまず「席を預かったが本人その器ではなく」とあり、所属組織で役職についたものの、その器ではないと断罪する主旨の通知だとわかる。続けて「意地も根性もないただの半端野郎でございます」とあり、みかじめ料を着服されたのか「自分の懐に入れときながら若い衆になすりつけ、努めて若い衆の女に平気で手を出すような外道です」と指摘している。総本部が出したなら「入れときながら」という書き方はしないだろう。暴力団組織は、このような通達を出す際には、表現はどうであれきちんとした日本語を使うものだ。
この通知の真意を関東を中心に活動するある暴力団幹部に聞くと、「怪文書だろう。詳しいことはわからないが、外道と指摘されたヤクザ自身、人気がないからな」と話していた。噂話が好きなヤクザは多いだろう。誰がどこで何をしているのか、何をしたか、誰とどんな関係か、見聞きしたり仕入れた情報を日々、シノギのネタにしている者もいる。それはヤクザ社会の中でも同様で、どこの組の誰がどんな人物で何をやっているのか、人望があれば評判になり、なければそれが噂になる。そのためヤクザ同士は大きな組織であっても、他の組織であっても、その人物に人気があるかないかは把握しているらしい。