内部が混乱しているケース
昨年5月には、こんな怪文書が出回ったことがある。「●●(実際の文書では実名)親分亡き後、間もないのに大変なことが起きています」という文章から始まるこの怪文書。破門、絶縁された幹部3人を名指しし、その親分から贈呈された金の扇子が盗まれ換金されてうやむやになり、今度は金の松が持ち出されようとしていると指摘。最後には「声を大にして悪だくみを阻止しましょう」という言葉で締めくくられている。前出の暴力団幹部はこの文章に、「親分が亡くなって、派閥同士が反目しあい内部が混乱しているのだろうと語っていた。
破門状の中には怪文書らしく、きわどい文言がずらり並び、暴力団幹部に「これはエグい」と言わせるようなものもある。昨年5月、ある指定暴力団の下部組織から出された破門状はユニークだ。黒字の破門状ながら、その内容は赤字以上のインパクトがあり、破門された当該組員はヤクザ社会に復帰したとしても大手を振って歩くことはできないだろう。その文章はこうだ。
『右の者 自己の快楽のみを追い続け 豆どろにまで成り腐り 度重なる先輩諸兄からの注意温情も踏みにじり ポン中街道まっしぐら、私利私欲の数々 犬畜生 外道にも劣るその行動 断じて許し難く 一家一門協議の結果 「破門」と決定いたしました』
豆どろは他のヤクザの妻や愛人などを寝取ることだが、通常はここまで詳しく破門の理由を書き連ねることはない。そのほとんどは言い回しや文面が定型化されたものが使われるため、目に余る行状が腹に据えかねたのだろう。それでも最後には型どおり当該組員は組織とは今後一切関係ないと書かれ、縁組、客分、交友、商談、使用等の儀は理由の如何を一切固くお断りいたしますという文章で締められていた。
怪文書だけでなく組織内部の映像流出や情報漏洩がおびただしい今のヤクザ社会は、絶えず注意していてもいつどこでどうなるのか、一寸先が読めない世界で、暴力団幹部は「私も気をつけます」と笑った。