『シッコウ!!~犬と私と執行官~』は9月12日火曜よる9時最終回(テレビ朝日系)

『シッコウ!!~犬と私と執行官~』は9月12日火曜よる9時最終回(テレビ朝日系)

シングルマザーに代表される「ひとり親家庭」の貧困

「女性の貧困」「子どもの貧困」「ひとり親家庭の貧困」などとその都度メディアでもいろいろな名称で報道されている。政府の調査でも、「ひとり親家庭」(母親もしくは父親1人と、その子からなる家庭)の場合は、半数以上が貧困状態にあるというデータがある。そのほかの家庭では貧困状態にあるのは6人に1人から7人に1人とされているので、非常に高い数字だ。

 筆者が2008年前後数年間のリーマン・ショックの時期と2020〜2021年の時期のコロナショック期の「女性の貧困」「子どもの貧困」「ひとり親家庭」に関するテレビ報道のデータを分析したところ、リーマン期は2009年に報道(放送時間)のピークになっているが、2020年、2021年にはそれをはるかに上回る時間が放送されている。(参考:『メディアは「貧困」をどう伝えたか』水島宏明著/2023年・同時代社の82ページあたり)

 コロナ禍では生活に困窮する「ひとり親家庭」が急増した。そして今や物価高が直撃している。そんな背景で生活苦の末に借金をしてしまうシングルマザーも少なくない。そんな社会のリアルを見事に映し出した回だった。ドラマで、シングルマザーが執行官の小原(織田裕二)に指輪を差し押さえ物件として差し出す場面に戻ってみよう。

(シングルマザー)「これもお願いします。もう逃げません。親や兄弟に相談してどうにか残りも返せるようにします」
(小原)「役所のほうにも相談してみてください。社会福祉協議会の審査に通れば無担保、連帯保証人なしで低金利の借り入れができる可能性があります」

 社会福祉協議会の貸付金は生活に困窮した人のためのいざという時のセーフティネットの一つである。ただし、条件や支払いのタイミングなどで制限があるために必ずしも必要な時にすぐに使える制度ではない。小原が言った「役所」というのは地方自治体の生活保護の窓口のことだが、こちらも困った時に必ずしもすぐに使える制度になっていないことは、福祉の専門家などから指摘されていることである。

『シッコウ!!~犬と私と執行官~』は9月12日火曜よる9時最終回(テレビ朝日系)

『シッコウ!!~犬と私と執行官~』は9月12日火曜よる9時最終回(テレビ朝日系)

 だが執行官である小原の役割としてはそう告げることが精一杯だったはずだ。この建前のような言葉を聞いて、シングルマザーが怒ったように小原に詰め寄る。

(シングルマザー)「執行官さんも公務員ですよね? 教えてほしいんですけど、税金って何に使っているんですか? なんで家事に還元されないの? 家族のためにきちんと働いている人のところにどうして少しも戻ってこないの? なんで普通に幸せになれないの? どうして…?」(「ママ、なんで泣いているの?…」と子どもの声)

 OECD諸国の中でも群を抜いて「ひとり親家庭」の貧困率が高い日本(OECDの最新データでは48.3%。36か国中ワースト2位)。税金や手当などでシングルマザーに還元される「所得の再配分」が極端に低いことを専門家も指摘している。そのことを当事者の言葉としてセリフにした名脚本家・大森美香さんの見事な脚本だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン