国内

有機フッ素化合物「PFAS」による水質汚染、被害が大きい沖縄と東京多摩地区での実態と住民が抱える不安

2020年、米軍による泡消火剤の漏出(宜野湾市提供)

2020年、米軍による泡消火剤の漏出(宜野湾市提供)

「子供たちの未来を創るための命の水を返してください。私たちはこの島に、ずっと住み続けていきたい。きれいな水とともに──」。今年7月、スイス・ジュネーブにある国連欧州本部の会議場に高らかな声が響いた。声の主は「宜野湾ちゅら水会」共同代表の町田直美さん。沖縄県宜野湾市でカフェを営む彼女は、沖縄の米軍基地由来とされる有機フッ素化合物「PFAS」による水質汚染の解決を求め、国連の「先住民族の権利に関する専門家機構」に参加。冒頭の声明を読み上げたのだ。

「沖縄では水道水や土壌に、人体に有害だとされるPFASが高濃度で含まれていることがわかっています。原因は米軍基地で使われた泡消火剤だとされており、政府にも米軍にも汚染源の特定や基地への立ち入り調査などを訴えているのに、まともに取り合ってくれなかった」(町田さん・以下同)

 その悔しさを訴えたいという一心で町田さんはスイスへ飛んだ。

「国連に訴えるのは簡単なことではなかったし、まだ解決したわけではないけれど、私たちが行動することによって行政を動かしていくしかない。特に小さな子を持つお母さんたちから、不安の声が多く上がっています。国連が調査し、日米両政府に勧告してくれることを期待しています」

 町田さんの声に後押しされるように、沖縄県は8月21日から全国に先駆けて、土壌におけるPFASの残留実態調査を開始。今年度末までに分析結果を公表する予定だ。

 PFASとは発がん性が疑われる「有機フッ素化合物」の総称で、PFOS、PFOAなど1万種類以上がある。科学ジャーナリストの植田武智さんが解説する。

「テフロン加工や撥水加工などに用いられるもので、分解されにくく残留しやすい性質を帯び『永遠の化学物質(フォーエバーケミカル)』とも呼ばれます」

 長く体内に留まることにより、健康被害も起こす。

「アメリカの研究では妊娠高血圧及び妊娠高血圧腎症、精巣がん、腎細胞がん、甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎、高脂血症を引き起こすことがあると指摘されている。特に子供や胎児への影響も懸念されます。北海道大学の追跡調査では妊娠中の母親の血中PFAS濃度が高いと、生まれてきた子供に出生体重の減少、甲状腺ホルモンや性ホルモンの異常、免疫力低下、神経発達の遅延、脂質代謝異常などのリスクが生じるとの結果が示されています」(植田さん)

 危険性を認識したアメリカでは規制が順次強化されており、今年3月に米環境保護庁が初めて発表した飲み水の規制値案は、PFOSとPFOAはそれぞれ1リットルあたり4ng(ナノグラム)となった。一方、日本では環境省による暫定指針値が定められているのみであり、それもPFOSとPFOAを合わせて50ngまで。米基準と比べると、非常に緩いと言わざるを得ない。

関連記事

トピックス

「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン