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漫画家・長谷川町子さん、65才で宣言した「これからが私の青春よ!」 人生を謳歌する姿勢が豊かな老後を生んだ

長谷川町子さんの教えとは

日本初の女性漫画家・長谷川町子さん

「いま振り返ると、町子伯母はフェミニズムの先駆者だったと思うんです」。そう語るのは、日本初の女性職業漫画家として『サザエさん』や『いじわるばあさん』を生み出した長谷川町子さん(享年72)の姪・長谷川たかこさん。戦前に父を亡くし、戦後に母、姉、妹と小さな出版社「姉妹社」を設立した町子さんは生涯「おひとりさま」として漫画を描き続けた。

「いまより男尊女卑が強い時代に、女性だけの家族が会社を作り、男性と対等に仕事をして、当時少なかった女性漫画家として成功しました。経済的な自立が女性に自由をもたらすこともわかっていたのでしょう」(たかこさん)

 バリバリ働きながらも肩肘を張らず、おおらかに生きることを大切にしたという。姉妹社の社員として一家を支えた川口淳二さんはこう振り返る。

「奉公する立場から申し上げるとあんなに優しい人はいない。怒鳴り声なんてもちろん一度も聞いたことがないし、ぼくが何か失敗しても『まぁ、いっか』で終わり(笑い)。海外旅行に行く際、出発する空港で『アーッ! パスポート忘れた!』と叫ぶサザエさんのようなそそっかしい一面もあるかと思えば、ファンのかたに見つかるのを恥ずかしがって隠れるようなシャイな一面もある、本当に素敵なかたでした」

 とはいえメールもファクスもない時代、新聞連載で毎日締め切りがある『サザエさん』の仕事はかなりの「激務」。ひとり机に向かい、アイディア出しに七転八倒した。

「町子先生は『一家を支えるのは私』という気持ちが強く、一度決めたら頑としてやり通す固い意志の持ち主。人任せは嫌だという思いもあり、アシスタントは一切雇わずすべてひとりで作業していました。画材を買うときも必ずご自身で選んでいた。結婚願望もまったくないわけではなかったけれど、それよりも『自分がこの家の主』という意識がとにかく強かった」(川口さん)

 しかし47才のとき、無理がたたって体を壊してしまう。

「仕事のストレスが原因で胃がんになり、胃を4分の3ほど切除したんです。それ以降は健康に気を使って、ストレスのない生活を心がけていました」(たかこさん・以下同)

 多忙な日々の中で特に町子さんが意識したのが、オンとオフの切り替えだった。

「自分のリズムで仕事をして、自由な時間ができたらパッと映画を見に行ったり、買い物に出かけたりしていました。行きつけのレストランも何軒かあり、おいしいものを食べ歩いていたようです。家ではヨレヨレのセーターでも外出するときはすごくおしゃれ。靴の色に合わせた手袋をコーディネートしていたので、子供心に“年増のシンデレラみたい”と思っていました(笑い)。『ひとり遊び』をできることが伯母の強みだったと思います」

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