国内

精子提供による人工受精で関心高まる「出自の告知」、当事者夫婦「子供には精子を《パパの卵》と言うべきか、《パパの種》と言うべきか」

鴨下医師

『はらメディカルクリニック』の鴨下桂子副院長

 現代日本において、約5組に1組の夫婦が「不妊治療」を経験している。その中に、第三者から提供された精子や卵子を使う方法がある。その広がりとともに、近年、子供の「出自を知る権利」が認知されはじめた。「あなたは精子提供で生まれた子供なんだよ」と、子供にどう説明したらいいのか──この8月下旬、不妊治療専門クリニックが都内で開催した、子供への「出自の告知」を支援するワークショップに潜入した。

 * * *

  提供された精子や卵子を使う治療のうち、特に提供精子による人工受精を「AID」と呼ぶ。国内では1948年に慶應大学病院で初めて行われ、これまでにAIDで生まれた子供は2万人以上いるとされる。精子を提供する「ドナー」は匿名なのが原則だ。

 日本産婦人科学会によると、国内のAIDの登録施設は16か所。そのひとつである『はらメディカルクリニック』の鴨下桂子副院長が、ワークショップの発起人だ。

「これまでに接してきた多くのご夫婦が、告知の大切さを十分に理解しながらも、告知への不安や戸惑い、葛藤を抱えているのを肌で感じてきました。告知の支援は、生殖補助医療の大きな課題であり、当事者家族が抱える告知のハードルを下げたいと考え、ワークショップ開催を決めました」(鴨下さん)

「出自を知る権利」に関しては、1989年の国連総会で採択された子供の権利条約に、「父母を知る権利」が記された。ただ日本では、「出自を知る権利」について国会で議論されたことはあるものの、明確に法律や制度で規定されたものではないのが現状だ。

 8月20日に開かれたワークショップには、AIDの当事者夫婦約40組が参加。鴨下さんと絵本作家のよしだるみ氏が制作した絵本『ねえ、しってる?』をベースにし、それぞれの夫婦が絵本のサブタイトルやセリフを考えることで、「どう告知すべきか」を深く考えていくきっかけにしようという内容だ。

 参加した30代の夫婦は現在妊娠5か月目。結婚7年目に待望の赤ちゃんを授かった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン