ベテランと若手のバランスを
もちろん、どんな優秀な選手でも自然の法則には逆らえない。三冠王を3回獲った落合博満もユニフォームを脱ぎ、松坂大輔も投げられなくなった。みんな自然の法則通りに体が衰えていくからです。そこを理解できていない巨人は、ピークを過ぎた選手を喜んで獲得する。名前で勝てるとでも思っているのだろうか。
ベテランが衰えていくなら、若い選手を育てればいい。原はそんな簡単なこともわかっていない。そのためにはどうするか。ライバルを作ることです。ライバルを作ってやることで、ベテランは落ちていく速度が遅くなり、若手は成長することになる。
ショートの坂本勇人に門脇誠というライバルが出現して、坂本がサードに追いやられた。昔の巨人ではポジションを空け渡したら終わり。そうやって世代交代してきた。もともと、坂本は素晴らしい素材であり、そこから自分流に勉強してショートのレギュラーを奪い取った。同じことを繰り返されて、今度は門脇にポジションを奪われた。坂本は少し休めば打ち出すという状況ですが、それはつまり疲れやすい年寄りの体になったということなんです。
たまたま坂本がケガで休んだから門脇が出てきたわけですが、本来は全ポジションに「ライバル」を作るべきなんです。川上哲治さんはわざわざ同じポジションのライバルを他球団や六大学から獲ってきた。そうやって巨人を強くしてV9を達成した。
とりわけ問題だと思うのは、とにかく原がオーダーを変えたがること。打順にはそれぞれの役割があることがわからんのだろうか。おまけに1、2番が初球から簡単に打っていく。たとえその結果がホームランでもダメなんです。できるだけ粘って相手を苦しめ、ランナーに出たところをクリーンアップが掃除する。そうやってチームで勝つのが日本の野球。そのためにもオーダーはコロコロ変えるものじゃないし、そんなことをしては選手が育たない。
守りも同じ。すぐに守備がうまくなることはなく、同じポジションを何年も守って上手になるもの。今の人工芝なら私はノーエラーでシーズンを通しますよ。昔は“イレギュラーを捕れるようになったら一人前”が合言葉だった。今の選手は捕れる球だけ捕り、二遊間のゴロも手が届かないと追わない。それでいて、ライバルになるような存在もいないのだから、上手くなるわけがない。
選手にいろいろ教わり、選手のためにやるという岡田が普通なんです。原は、悪ければ選手の責任といわんばかりに、次から次へと選手を獲る。余った助っ人をベンチに座らせているという状況にもかかわらず、来季のためにメキシカンリーグでプレーしている外国人投手を育成で獲るという。本当にそれでいいのか。結果がよくないということは、自分のどこかに欠点がある。原には早く、そこに気が付いてもらいたい。