ジオラマのつくりっぷりは当時の特撮作品を彷彿とさせる

ジオラマのつくりっぷりは当時の特撮作品を彷彿とさせる

ディズニーも“フェイク”世界観を作り上げる熱量が半端ない

 テレビ、特にNHKでフェイクドキュメンタリーが放送されたことも、大きな驚きだった。

「やっぱりNHKがフェイクを流すはずがないという認識が視聴者の中にあるから、すごくやりがいがあるというか楽しいなと思いましたね。逆にNHK側も、成立させるために、ここはこうすれば大丈夫だとか、すごく協力していただきました」

 藤井は以前から「大嘘博物館 カプセルトイ2億年の歴史展」などフェイクドキュメンタリー的な制作物を世に送り出している。どこにフェイクの魅力を感じているのだろうか。

「僕自身、映画とかを見ても劇中の映像とか小道具がすごい気になっちゃうタイプで、画面に映っているポスターとかがウソっぽかったりすると冷めてしまう。そういうディテールを突き詰めていって、いかにないものをリアルに見せるかという努力が好きだし、それだけでもワクワク感がある。ストーリーももちろん大事なんですけど、そのリアリティでどれだけ没入感を味わえるか。

 僕、ディズニーランドって好きそうじゃないって言われるんですけど、意外と好きで(笑)。ある意味ディズニーランドもフェイクで、そのフェイクを作る熱量が半端ないじゃないですか。そういう『世界観を作る』というのが好きなんです。元々映画もドラマも、“ない話”なんですけど、そこにドキュメンタリー目線が入ることでウソが実在する面白さが際立つんじゃないかと思います」

 約1年間でブームと言っても過言ではない反響を巻き起こした『TAROMAN』。なぜこれほどまで受け入れられたのだろうか。

「やっぱり岡本太郎作品が持っている潜在的な魅力がすごくあったのが大きいと思います。アート作品という目線でしか見られてこなかった作品を特撮という別の見せ方をしたことで、その魅力に気づいてもらえた人が多かったんじゃないですかね」

“続編”も期待されるが「こればっかりは僕の一存では決められないので」と藤井は笑う。

「少なくともちょっと間を置いたほうがいいんじゃないかなっていう気はします。あんまりズルズル引きずるのも綺麗じゃないし、『同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ』と岡本太郎も言っていますからね(笑)。やるとしても、ちょっと間を置いて何か新しいことをやるのが一番いいんじゃないかと思います」

(了。前編から読む

【プロフィール】

藤井亮(ふじい・りょう)/映像作家。武蔵野美術大学卒業後、2003年電通に入社。滋賀県PR動画「石田三成CM」やNHK・Eテレ「ミッツ・カールくん」など発案、制作し話題を集める。2019年に独立し株式会社豪勢スタジオ(GOSAY studios)を設立。

◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。

©NHK・藤井亮 2023

撮影/槇野翔太

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