【政治部記者覆面座談会・第1回】岸田文雄・首相は低迷する支持率を挽回しようと過去最多に並ぶ5人の女性大臣を起用し、11人を初入閣させて人事刷新をアピールしようとしたが、各社の世論調査で支持率は横ばい、自民党内には人事の不満が高まる結果となった。
アテが外れた岸田首相は「支持率に一喜一憂しない」と言いながら国内向けに物価対策の新たな経済対策をまとめることを表明して訪米すると、国連総会演説で「核なき世界」を訴えて核軍縮に30億円、感染症対策などに75億ドル、アフリカ連合の平和支援に900万ドルの拠出を表明するなどバラマキ外交を展開、国内外で失点をお金で挽回しようと躍起になっているように見える。
政治部ベテラン記者A氏は「まるで政権末期の改造」と語る。
「総理にとって改造人事が支持率回復につながらなかったのは誤算でしょうが、当然といえば当然。政権の骨格は変えられず、官房長官、財務大臣、経産大臣など主要閣僚は再任、初入閣組が11人といっても、女性大臣以外は組閣前に各派の領袖から推薦されていた大臣候補をほぼそのまま任命した。自民党伝統の派閥順送り人事で、新鮮な印象はない。
総理は当初、大幅人事を考えていたようだが、途中から保身のために安全策に切り替えた。だが、それが結果的に党内の不満を強め、政権の寿命を縮めたのではないか」
内閣改造は政治部記者たちにとっても腕の見せ所だ。首相官邸が建て替えられるまでは、改造の時期になると官邸前に報道各社のテント村がつくられ、各局は特番を組んで取材合戦を展開した。現在はテント村こそなくなったが、改造前から人事情報が飛び交い、総理と自民党実力者たちの水面下の駆け引きが展開された。
そこで本誌・週刊ポストは官邸詰めや自民党担当の政治部記者4人による緊急覆面座談会を開催し、改造の舞台裏を辿った。参加者はキャップクラスのベテラン記者A氏とB氏、取材の第一線に立つ若手・中堅のC氏とD氏だ。座談会で浮かび上がったのは、政敵をなんとか葬ろうとする総理と、総理を潰そうと計略をめぐらす自民党実力者たち、リーク情報に踊らされてそうした権力闘争に利用される大メディアの姿だ。
司会(編集部):取材していて最大のサプライズ人事は?
記者D:やはり林芳正・前外相の交代でしょう。林さんはG7外相会議の議長を務めていたから、途中で交代させるのは外交的にもマイナス。各社とも完全にノーマークで記者はみんな「エッ」と驚いた。